今岡憲特許事務所マーク

トップボタン
 パテントに関する専門用語
  

 No:  1084   

約因/特許出願の要件(外国)/

 
体系 外国の特許法・特許制度
用語

約因(Consideration)

意味  約因(Consideration)とは、英米法において有効かつ拘束力のある契約を成立させるための条件であり、一種の対価の如きものです。


内容 @約因の意義

(a)約因は、契約を結ぶための原因となった事項であり、例えばgive and takeの関係の場合には、当事者が相手に与え、かつ自分が受け取る何かです。

 もう少し具体的にいうと、約因があるとは

「Considerationがある」とは、

・当事者Aが受け取る利益(benefit)と当事者Bが受ける不利益(detriment)の一方または双方がある。

・当事者Bが受け取る利益と当事者Aが受ける不利益の一方または双方がある

・これら利益と不利益とが交換される約束がなされている

 ことをいうとされています。

(b)約因は、契約が有効で拘束力のあるものであるために必要です。

(c)約因は、日本の法律にない概念ですので、理解しにくいと思います。そこで米国の判例を例にとって約因の概念を解説します。

 Allegheny College v. National Chautaugua Country Bank of Jameson,
246 N.Y. 369, 159 N.E. 173 (1927)

 は約因の有無が争われた事例です。

 Mary Y. Johnson という人物が大学(Allegheny College)に彼女の死後45,000ドルを寄贈することを約束していました。しかしながら、彼女の遺言執行者は、それだけ払うのは勿体ないと思ったのか、1,000ドルを寄贈したのみで残りの寄贈を拒絶しました。

そこで大学側が彼女の遺言執行者を訴えた。

 一見すると、この事案は単なる贈与であって、約因がないように思えます。

 しかしながら、大学は、45,000ドルの寄贈を受ける代わりに、大学は彼女の名前を財団の名前に組み入れることを約束したので、約因があると主張しました。

 そこで裁判所は、この事実をもって大学の側が不利益(detriment)を受け入れたものと認定し、considerationありと判断しました。

zu

(d)約因(consideration)の記載の表現の一例を挙げます。

・NOW THEREFORE, in consideration of the promise and mutual covenants herein-after set forth, the parties hereto agree as follows:
そこで,以下に定める約束と相互の合意を約因とし て,両当事者は以下の通り合意する。

A約因の内容

(a)特許出願の譲渡証では、約因の存在を示すために、次のような記載の仕方が一つの定型となっています。

 In consideration of the sum of one dollar ($1.00) and other good and valuable consideration paid to the undersigned, each undersigned agrees to assign, and hereby does assign to A …the entire right in the invention, in all patent application known as…

 下記の署名者は、署名者に支払われる1ドル及びそれ以外の善良約因及び有価約因を考慮して、Aに対して…で知られる発明、全ての特許出願…に関する権利を、譲渡する。
善良約因(good consideration)とは
有価約因(valuable consideration)とは

(b)日本人には“1ドル”という言葉が奇妙に思えますが、裁判所は、特許出願等の権利と1ドルとが釣り合っているかどうかは全く判断しないので、このように約因が記載されている限り、この契約が拘束力を有することが確実となります。


留意点  約因のない約束事が法的に拘束力を有する場合として、Promissory estoppelを適用するべき場合を挙げることができます。
Promissory estoppel(約束的禁反言)とは


次ページ

※ 不明な点、分かりづらい点がございましたら、遠慮なくお問い合わせください。


 

パテントに関する専門用語一覧へ戻る




今岡憲特許事務所 : 〒164-0003 東京都中野区東中野3-1-4 タカトウビル 2F
TEL:03-3369-0190 FAX:03-3369-0191 

お問い合わせ

営業時間:平日9:00〜17:20
今岡憲特許事務所TOPページ |  はじめに |  特許について |  判例紹介 |  事務所概要 | 減免制度 |  リンク |  無料相談  


Copyright (c) 2014 今岡特許事務所 All Rights Reserved.