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①特別法の意義
(a)特別法は、特別の事象に限って適用される法律であり、一般法に対立する概念です(→一般法とは)。
(b)特別法と一般法との関係は相対的であり、一般法であるA法に対して特別法であるB法が存在し、そして一般法であるB法に対して特別法であるC法が存在するという関係が成立し得ます。
(c)特別法は一般法に優先します(→特別法優先の原則とは)。
②特別法の内容
(a)特許法は、新規性や進歩性を具備する発明を特許出願し、これを社会に公開することの代償として、特許権という権利を付与し、この権利内容として物権類似の排他的性質を認めたことにより、産業の発達に寄与することを目的とするものです。
無体物である発明に独占排他権を付与し、差止請求権(特許法第100条第1項)や侵害行為組成物等の廃棄請求権(同条第2項)を認めて保護を図る点は、民法の物権法の部分を借用していると考えることができ、そうした意味で特許法のうちの権利法の部分は民法の特別法であると主張する学説もあります。
(b)また特許法第35条には、従業者等がした発明(職務発明を除く)に関して、予め使用者等に特許を受ける権利(特許出願をする権利)若しくは特許権を承継させることを定めた契約・勤務規則・その他の条項は無効とする旨が定められていますが、これは民法の基本原理である契約自由の原則の例外となります。
この規定は強行規定であり、当事者がこれと逆の条項を設けても意味がありません。
特定の分野の事情を考慮して、こうした強行規定を含む特別法を立法することにより、弱い立場の人を適切に保護できます。
(c)権利の共有に関して、民法264条は「この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。」と定めており、所有権以外の財産権である特許権に関しても、特別法たる特許法に特段の定めがない限り、民法の共有の規定が当然に適用されます。
しかしながら、その別段の定めとして特許法第73条第1項が規定されているため、権利の共有に関して民法と特許法とでは次の違いがあります。
・民法第252条…“共有物の管理に関する事項は、前条の場合(共有物に変更を加える場合)を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。”
共有物を利用する行為は管理行為に含まれるため、共有物に変更を加える場合を除いて、持分の過半数による決に従って行うことができます(→管理行為とは)。
・特許法第73条第1項…“特許権が共有に係るときは、各共有者は他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。”
すなわち、持分が2/3の共有者でも持分が1/3である共有者の同意を得なければ、共有に係る特許権の特許発明を実施できないのです。
無体物である発明は、有体物と異なり、一人の使用により他の使用ができなくなるものではなく、資本力により他の共有者の持分の経済的価値を変動する可能性があること、
特許を受ける権利が共有に係るときには共有者全員でなければ特許出願をすることができないなどの事情から、特許権の共有者の間には特別の信頼関係があること
などの事情から、こうした規定が設けられています。
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