内容 |
①利益率方式の意義
(a)職務発明について従業者等と使用者等との間に職務発明規定が締結され、従業者等が使用者等に特許を受ける権利(特許出願をする権利)を原始的に取得し、或いは特許を受ける権利や特許権を承継することになっている場合には、従業者等は、使用者等から対価として相当の利益を受ける権利を有します。
(b)“相当の利益”は、“超過売上額”から算定される“超過利益”のうち使用者等の寄与分を除いて導かれます。
(c)ここで“超過売上額”とは、“対象製品の売上額”から“法定通常実施権による売上額”を差し引いた金額です。使用者等はもともと法定通常実施権を享受できる立場にあったからです(特許法第35条第1項)。→超過売上額とは
(d)使用者等である特許権者が自ら実施をしている場合に、“超過売上額”に利益率を乗じて“超過利益”を得る方法を利益率方式と言い、他方、“超過売上額”に仮想実施料を乗じて“超過利益”を得る方法を実施料率方式と言います(→実施料率方式とは)。
(e)利益率方式は、自己実施の場合の超過利益をより直接的に反映するものです。しかしながら、次の点で立証に困難性があります。
・第一に、使用者等における将来の設備投資などのリスクが不明であること。
利益率を用いるときには、実施品にかかる変動経費を控除した利益(限界利益)を割り出す必要があります(→限界利益とは)。
・第二に、対象製品の売り上げに対する特許の利益率が不明であること。
(f)実施料率方式は、仮想実施料率を用いる便法的方法です。どちらも立証が可能であれば前者を取るべきであると解されますが、実務上は、利用率方式を採用した事例は多くありません。
②利益率方式の内容
(a)平成17年(ワ)第2997号事件(光電面及びその形成方法事件)において、裁判所は次のように判示しています。
「被告は,上記(3)の金額に仮想実施料率5パーセントを乗じて,超過売上高に占める利益を算定する旨主張するが,上記(1)で検討したとおり,自己実施に係る被告の独占の利益について,市場シェアから算定する方法をとることとしたものであって,この算定方法による場合,端的に利益率を乗じて,その利益を算定するのが相当であり,その率については,明確な資料はないものの,10パーセントとみるのが相当である。」
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