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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1223   

従業者の利益の合理性/特許出願

 
体系 特許申請及びこれに付随する手続
用語

従業者等の受ける利益の合理性

意味  従業者等の受ける利益の合理性とは、職務発明をした対価として従業者等が受ける利益が、当該利益の内容を決定する基準を策定するための使用者等と従業者等との間の協議、当該利益の開示状況などから見て、合理的であることを言います。


内容 @従業者等の受ける利益の合理性の意義

(a)我が国の技術開発の主たる担い手は、企業の技術開発部門とそこで働く従業員であり、特許庁に対して特許出願される発明の大半は、従業者等がした職務発明です。従って職務発明をどのように取り扱うか、使用者等と従業者等との保護をどうバランスをとるかは、特許制度の喫緊の課題でした。

(b)そこで平成27年の特許法改正において、使用者等と雇用者等との事前の合意に基づいて、特許を受ける権利(特許出願する権利)を使用者等が原始的に取得することを認めるなどの改正を行いました。

 従来は、特許を受ける権利を原始的に取得するのは発明者であること(特許法第29条第1項柱書)という原則を尊重し、事前の取り決めにより特許を受ける権利を予約承継した使用者などが特許出願を行うという順序を取ることが多く、これに比べると実務上は大きな変化となります。

(c)これに伴い、前述の取り決めにより使用者等が特許を受ける権利を原始的に取得したり、或いは予約承継した場合等に従業者等が対価として受けるべき“相当の利益”に関しても、合理的なものであることを保証する必要があります。そうしなければ実際に職務発明を創り出す発明者のインセンティブを維持できないからです。

 “相当の利益”が不合理であるか否かは、単に金額だけではなく、下記に述べるように多くの観点から判断されます。

A従業者の受ける利益の合理性の内容

(a)特許法第35条第5項は、契約、勤務規則その他の定めにおいて相当の利益について定める場合には、次の事項等を考慮して、その定めたところにより相当の利益を与えることが不合理であると認められるものであつてはならない旨を定めています。

・相当の利益の内容を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況

 こうした協議を経ずに当事者の一方(例えば使用者等)が勤務規則等の基準を作成し、他方の当事者(例えば従業者等)がこれを承認するか否かを選択するという手順を踏むと、双方の力関係や知識の違いにより不合理を生じ易いからです。
相当の利益の合理性の考慮点1(基準策定のための協議)

・策定された当該基準の開示の状況

 他方の当事者の全てが基準策定に直接関わる者でない可能性を考慮し、基準の内容を随時了知できるようにするためです。
相当の利益の合理性の考慮点2(開示状況)

・相当の利益の内容の決定の際の従業者等からの意見の聴取の状況

 使用者等が従業者等の意見を真摯に聴取することにより、合理性が担保されると考えられるからです。但し、従業者等が意見した事柄について合意がなされないからといって、常に基準が不合理であるとは言えません。
相当の利益の合理性の考慮点3(意見の聴取)

(b)特許法第35条第6項によれば、“経済産業大臣は、発明を奨励するため、産業構造審議会の意見を聴いて、前項の規定により考慮すべき状況等に関する事項について指針を定め、これを公表するものとする。”とされています。

(c)特許法第35条第7項によれば、“相当の利益についての定めがない場合又はその定めたところにより相当の利益を与えることが第五項の規定により不合理であると認められる場合には、第四項の規定により受けるべき相当の利益の内容は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければならない。”とされています。
職務発明に対する相当の利益とは


留意点

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