パテントに関する専門用語
  

 No:  1253   

妨害排除請求権/特許出願/進歩性/特許出願中

 
体系 法律全般
用語

妨害排除請求権

意味  妨害排除請求権とは、物権の内容の完全な実現が占有以外の形で妨害されている場合に、その物権に基づいて妨害の排除を請求する権利です。


内容 ①妨害排除請求権の意義

(a)民法は、所有権絶対の原則を三大原則の一つとしているため、所有権は有体物に対する全面的な支配権として認めなければなりません。

 従って、対象物が他人により占有されている場合(物権の核心部分の侵害)に物権的返還請求権が認められるのは当然のこととして(→物権的返還請求権とは)、対象物の占有以外の形で物権の実現が妨害されている場合にも、その妨害行為を排除する権利を認めるべきです。

 こうした権利を、妨害排除請求権と称します。

 例えば土地にゴミを不法投棄した者に対して、土地の所有者が現状回復を請求することが該当します。




(b)また妨害の排除を一歩進めて妨害の予防も請求することができます(→妨害予防請求権とは)。

(c)妨害排除請求権は、もともと有体物を目的物とする所有権を対象とするものですが、学説・判例は無体財産権及び不動産貸借権についてもこれを認める傾向にあります。

(d)特許権に関しては、特許法第100条第1項に、妨害排除請求権に類似する差止請求権について規定しています。

 もっとも、工業所有権逐条解説は、本項について「こうした請求権は別段の規定がなくても旧法においても認められていたところであり、その意味では当然のことを明確にしたものということができる。」としています。

 但し、特許出願中の段階ではこうした差止請求権は認められません。新規性・進歩性等の実体審査を経て、特許出願に対して特許権の設定登録が行われることで、物権的な性質が付与されるからです。

(c)不動産賃貸借に関しては、判例は「土地の賃借権について、登記その他、その賃借権を以て第三者に対抗し得る要件を具備した場合は、その賃借権はいわゆる物権的効力を有し、その土地につき賃借権を取得した者に対しても妨害排除の請求をなし得ることは当裁判所の判例の示すところである。」と判示しています(最高裁・昭和26年(オ)第658号)。

②妨害排除請求権の内容

(a)特許権に基づく差止請求権と妨害排除請求権とが類似の権利であるということを前述しましたが、特許権の存続期間が満了した段階において、特許権の存続期間中に行われた侵害行為を組成する物に対して妨害排除請求を求めて元特許権者が提訴した事件があります。

 差止請求権の代わりとして妨害排除請求権を主張したようですが、さすがにこれは無理な話であり、裁判所はその主張を退けました。
妨害排除請求権のケーススタディ1

(b)また不動産賃貸借に関して妨害排除請求権を認めた判例を紹介しましたが、こうした判例の論拠を利用して、ノウハウの保護に関して妨害排除を請求して提訴した事件があります。これについても裁判所は請求を棄却しました。
妨害排除請求権のケーススタディ2


留意点

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