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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1291   

外国法廷CS/特許出願(外国)

 
体系 外国の特許法・特許制度
用語

外国法廷等に利用されるための証拠等のケーススタディ

意味  外国法廷等に利用されるための証拠等は、米国第28法典第1782条において、米国の裁判所が一定の条件の下で外国法廷又は国際法廷で利用されるためを提出を命ずることができる証拠及び陳述書・或いは作成を命ずることができる書類を言います。



内容 @外国法廷等に利用されるための証拠等の意義

(a)米国の裁判所及び裁判手続法によれば、裁判所は、外国法廷又は国際法廷の訴訟手続に利用されるための(for use in a proceeding in a foreign or international tribunal)証拠や陳述書の提出、又は書類等の作成を命ずることができます。

 この命令は、地方裁判所が当該地区の居住者等に対して発します(米国第28法典第1782条)。

(b)この制度は、外国への司法的支援(foreign judicial assistance)という性質を有するものです。

(c)1964年には第1782条の適用範囲を拡大する改正がなされています。
一つは、“いかなる裁判所(any courts)”という文言が“外国法廷又は国際法廷(a foreign or international tribunal)”と改正されたことです。

もう一つは、(裁判所に)“係属中の如何なる法的手続(any judicial proceeding pending in)”という文言が“(法廷)における手続(a proceeding in …a tribunal”と改正されていたことです。

(d)改正後の条文に関して、General Universal Trading Corp. v. Morgan Guaranty Trust Co. 936 F.2d 702,706事件(経済犯罪に関する事件なので、具体的な内容は省略します)では、次の点を考慮して、証拠等の提出命令の是非を判断するべきとしています。

・外国手続の性質 前記法改正に関連して、裁判所は、外国法廷の手続とは、“伝統的な裁判所における手続(proceedings before conventional courts)に限定されない。”という判断を示した。
外国法廷等の意味(米国裁判手続法第1782条の)

・手続の時期  “司法手続が差し迫っている、すなわち手続が行われる可能性が非常に高くかつ直ぐに始まる(adjudicative proceedings be imminent ? very likely to occur and very soon to occur)”と解釈されます。
外国法廷等の手続の意味(米国裁判手続法第1782条の)

A外国法廷等に利用されるための証拠等の内容

 特許出願の日前の先行技術の存在により新規性・進歩性を否定できるときには、わが国では特許無効審判を請求することができます。

 この特許無効審判が米国28法典第第1782条にいう「外国法廷」に該当するのか、証拠開示請求の可否について争われている間に特許無効審判の口頭審理が終結したときにはどうなるのかが判示された事例として、Ishihara Chemical Co. Ltd. v. Shipley Co. Ltd.を紹介します。

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〔事件の経緯〕

(a)Ishihara Chemical Co. Ltd.(甲)とShipley Co. Ltd.(乙)におけるライバル会社です。

(b)乙は、日本国に1985年12月に「スズ-鉛電気メッキ溶液及びそれを用いた高速電気メッキ方法」について特許出願を行い、1990年9月に出願公告となり、1999年5月に特許権の設定登録を受けました(第2,140,707号)。

・1999年7月14日、甲が請求した前述の乙の特許の無効審判についての審理が日本国特許庁(以下「JPO」という)で開始された。

・1999年10月26日、甲はニューヨーク州東部地区地方裁判所に、§1782を根拠として、JPOでの無効審判手続きに利用するために証拠開示を乙に対して命令することを求める申請した。

・2000年4月18日に、同地裁がこの申請を全面的に認める決定を下した。

 乙は、JPOでの審判は§1782にいう「外国法廷」ではないとしてこの決定を争った。

・2000年11月16日同地裁は事実関係説明及び口頭弁論の後に、あらためて、この証拠開示命令請求の一部は認めるが、書面質問及び自認要求についての命令請求は認められないとする決定を下した。

両者は共にこれを不服とし、乙は2000年12月20日にアピール(上訴)し、甲は2001年1月19日にクロスアピールした。
クロスアピール(cross-appeal)とは

・2001年1月17日に、すなわち、当該上訴審が係属中のJPOは甲の請求した上記無効審判について口頭審理を行った。

・2001年5月25日、第2巡回区控訴裁判所は「外国訴訟等手続きにおいて利用するための米国第28法典(裁判所及び裁判手続法)§1782に基づく証拠開示命令の請求は、当該外国訴訟等手続きの結論が出された後は却下する。」との判決を下した。

〔当事者の上訴理由〕

 甲は、当該上訴理由申立書中で「要求にした証拠は本来、2001年1月17日にJPOで行われる口頭審理に提出される予定だったが、残念ながら当該口頭審理は終結した。しかしながら、これから得られる証拠は新たな無効審判に用いる予定である。」と述べた。

 乙は、請求された証拠がもはや外国訴訟等手続きにおいて「利用される」ことがなくなったから当該証拠開示命令の申請および当該上訴は訴因消滅として却下されるべきであると主張した。

 甲は、2001年3月1日、上訴補充理由申立書で、「当該証拠は、現在係属している無効審判での新しい証拠として用いるか、もしくは、それが不可能なときには707号特許について第2の無効審判を請求しそこで用いる予定である。」と従来の主張を一部変更した。

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〔控訴裁判所の判断〕

 上訴審での争点の一つは、「外国訴訟等の手続きが差し迫っていること」との要件を満たすか否かである。

 判事は上記争点について、甲が§1782の要件を満たしていないとのシプリィ社の主張に同意した。

 判事は、要求された証拠が訴訟等手続きで「利用される」ためには、その訴訟等手続が現実的に係属している必要はないにしても、少なくともまさに開始される状況ではならないとし、従って、当該証拠開示をJPOにおける当該無効審判において新たな証拠として用いるとか、これとは別の新たな無効審判を請求してそこで用いるつもりである甲の主張に同意することはできない、と判示した。

さらに同判示は、JPOでの口頭審理は終結したため、日本の法律では甲はこの要求のあった証拠開示の結果を用いることはできないだろう、と付け加えた。

この判断に際し、判事は、JPOにて審査官・審判官経験のある日本人弁理士による「日本特許法第131条第2項に照らし、JPOは、無効審判請求時には提出されなかった新たな証拠の採用には消極的である …(中間略)… 現在係属中の無効審判で新たな証拠の提出はできないと思われる。」との見解を証拠として採用した。
→日本特許法第131条第2項とは



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