体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
不利な推定(Adverse Inference) |
意味 |
不利な推定(Adverse
Inference)とは、E-ディスカバリーにおいて米国民事訴訟規則(FRCP)に反して情報を隠蔽した当事者に対して当該当事者に不利な事実認定がされることを言います。
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内容 |
①不利な推定の意義
欧米法では司法の公平性を担保するために、電子メールなど電子情報の開示を求めるプロセス(E-ディスカバリー)において情報の開示が求められます。例えば特許争訟においては、標準化技術に関して或る企業が標準化団体に参加する前に特許出願して取得した特許を、当該団体の他のメンバーに対して行使する場合、いつの時点から標準化団体と関わりを持っていたかが問題となる場合があります。技術標準が形成されるプロセスに関わって標準化会議の行方を見守りながら将来標準化されそうな技術を特許出願し、標準化された後に特許権を行使するという事例があるからです(→ホールドアップ問題とは)。
また特許訴訟の当事者が特許無効の抗弁をしようとするときに、特許要件に関する有無(特許出願前の関連する先行技術の有無)に関する情報を含む電子メールがディスカバリーの対象となることもあります。
ディスカバリーに際して当事者が民事訴訟規則(FRCP)に反して情報(電子保存情報など)を提出しなかったことが判明した場合には、その制裁として当事者に不利な推定が行われます。
②不利な推定の内容
(a)例えばアップル対サムソン事件では、サムソンにはもともと“電子メールは二週間経過した後に削除する”という社内のルールがあり、アップルとの裁判の可能性が生じた後に社員に対して電子メールを削除しないようにとの通達(いわゆる訴訟ホールド)を出したものの、この通達が守られず、大量のメールが削除されました。
単に一般の社員に通達を出すだけではなく、訴訟の責任者が訴訟に関係する電子メールをより分け、改変されない状態で保存する必要があったのです。
削除された電子メールの中にアップルにとって有利な証拠があったかどうかは確認のしようがありません。
この事例では、陪審員は、証拠保全義務が発生した後に関連証拠が削除されたこと、失われた証拠がアップルに有利なものであったことに関して、アップルが証明責任を果たしたものと推定しました。
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留意点 |
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