体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
JMOL動議(Motion for Judgment as a matter of law) |
意味 |
JMOL動議とは、米国における裁判のトライアルにおいて、一方の当事者が、他方の当事者によって提出される証拠が当該ケースを合理的にサポートするに足りないときに行われる動議です。
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内容 |
①JMOL動議の意義
(a)一般に米国の陪審裁判の手続は、オープニングステートメント、証言、クロージングステートメント、陪審教示、陪審評決という順序で進行します。
(b)陪審評決では、当事者が主張する事柄が事実か否かが証拠を元に判断されます。しかしながら、事実の成否の問題(→事実問題とは)以前に、法律問題として(→法律問題とは)、当事者が提出する証拠が当該ケースを合理的に裏付けるに足りないと相手方の当事者が判断した場合には、相手方である当事者は、“ケースが陪審員に委ねられる前のいつでも法律問題の判決の動議(JMOL動議)を行うことができる”とされています(米国民事訴訟規則第50条(2))。
(c)JMOL動議が認められる場合とは、地裁が双方の当事者によって提出された証拠を衡量したり、証拠の信憑性を考慮するまでもなく、実質的な証拠が陪審の認定を支持するに足りないと認められる場合です。
例えば特許侵害訴訟において、特許の有効性が争われており、具体的には、一方の当事者が、特許出願の有効な出願日以前に特許発明と同様の技術が公開されていたので当該特許は無効であると一方の当事者が主張しているが、“有効な出願日”の解釈を誤っているような場合です。
(d)JMOLと関連する概念として、directed
verdict(指示評決)があります。指示評決は、陪審員による評決によらずに行われる判決です。 →指示評決動議(Motion
for Directed Verdict)とは
②JMOL動議の内容
(a)JMOL動議を認めるべきかが争点となった事例として、Johns Hopkins University, et al. v.
Datascope Corporation, CAFCを紹介します。
・この事例は、“機械的に破砕する経皮カテーテルシステム”と称する発明について特許出願された3件の特許権に関する侵害訴訟であり、これら特許発明は、合成血管を閉塞する血栓を機械的に破砕することを内容とします。
・陪審説示によれば、原告の証拠は、被疑装置のワイヤ構造が血管内腔に「三次元において接触する」とされています。ところが、原告側の専門家は「二か所だけで接触している」と証言していました。
・被告は、地方裁判所に対してJMOLの動議を行いましたが、地方裁判所はこれを拒否しました。そして陪審は、被告が原告の特許権を侵害していると評決し、特許侵害の判決が出されました。
被告はこれに対して控訴を行いました。
・控訴裁判所は、控訴人(被告)の主張を認めて、原判決を破棄し、ケースを地方裁判所に差し戻しました。
“前記陪審説示は証言と矛盾しており信憑性がなく、文言侵害の評決は、実質的な証拠によって支持されていないものと判断される。被疑装置が陪審説示で定義されたように機能を果たさないからである。陪審の侵害評決が、実質的な証拠によって支持されておらず、被告が求めたJMOLの申立ては認められるべきであった。”
と判断したからです。
(b)また特許クレーム中の用語の解釈を巡ってJMOL動議が許可された事例として、次のMarkman事件を紹介します。 →JMOL動議のケーススタディ1
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留意点 |
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