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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1328   

特許出願人のフロード/進歩性

 
体系 外国の特許法・特許制度
用語

特許出願人によるPTOに対するフロード(Fraud on the PTO by the applicant)

意味  フロード(Fraud)とは、一般的に相手に価値のあるものを差し出させるために意図的に事実を曲げることを言い、米国特許商標庁(PTO)の手続上は、主として特許出願人が保護を求める発明について先行技術などの情報開示義務を果たさないことで特許を得ようとすることを言います。



内容 @特許出願人のフロードの意義

(a)米国特許法の下では、特許出願人は、出願をする際及び(後日に情報を知得したときには)出願後に、先行技術等の情報に関して技術開示陳述書(Information Disclosure Statement)を提出しなければなりません。

 それにより、特許出願の審査の質、特に新規性・進歩性の審査の質を高めるためです。

(b)特許出願人が情報開示義務を怠ると、フェアでない行為(inequitable conduct)と解釈され、Fraud(詐欺)となる可能性があります。

 特許出願人のフェアでない行為によって取得された特許は行使することができません。→特許の行使可能性(The enforceability of a patent)とは

(c)具体的には、特許出願の審査に重要(material to examination)な情報については、特許出願に提出する必要があります。

 例えば米国特許出願の対応出願として新規性・進歩性のサーチレポートが出されたときには、レポートに記載された先行技術を提出することが必要です。

 またレポートそのものも、そこに記載された事柄(先行技術の評価や進歩性を否定するための論理付け)が特許出願の審査に重要であれば提出するべきです。

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A特許出願人のフロードの内容

(a)特許出願人の情報開示義務は、実務上で厳格に解釈されており、例えばサーチレポートに記載された複数の先行技術のうちで特許出願人が重要と思うものとそうでないものを選別し、前者のみをPTOに提出するという如き恣意的な判断は絶対に避けるべきです。

(b)しかしながら、特許出願の先行技術調査においては、当該出願の審査にある程度関係するであろうという先行技術の数が膨大になってしまう場合があります。

 例えば要素A+B+C+Dからなる発明の特許出願をするために先行技術を調査したところ、要素A+B+Cからなる技術、要素Dからなる技術を見つければ、これらを主引用例及び副引用例の候補として、PTOに提出するべきなのは当然として、要素A+Bからなる技術が多数見つかった場合にどうするのかという問題があります。

  何らかの理由(例えば自明性を否定する阻害要因が見つかった場合)で要素A+B+Cからなる技術が引用例としての適格性を欠く可能性もあるので、要素A+Bからなる技術も特許出願の審査にmaterialであるとなる可能性もあります。

 しかしながら、要素A+Bからなる技術の数が膨大であると、それを全部提出すると、審査が渋滞する可能性があり、それら先行技術が英語以外の言語で記載されている場合に、それらを英語に翻訳するコストの問題も発生します。

 こうした事情が存在する場合に、どの程度まで先行技術を提出するべきかは悩ましい問題となります。

(c)裁判所において特許出願人によるフロードの有無を陪審に判断させる場合には、判事が陪審に説示しますが、ある事例で地方裁判所の判事が、PTOでの審査官・審判官の特許出願に対する“決定に影響を与え得る程に関係する(pertinent)全ての事実を完璧に陳述”するべきであると説明したところ、控訴裁判所が“この説明は広すぎる”としてケースを差し戻した事例があります。例えば特許出願人に対して有利な情報を提出しなかった場合も含まれてしまうからです。
特許出願人のフロードのケーススタディ1-A

(d)同じ事件において、控訴裁判所は、フロードの問題は、提出されなかった情報の重要度と、それを提出しなかった特許出願人の意図との双方を勘案して判断すると判示しています。すなわち、

 提出されなかった情報の重要度が高いときには、それを隠して特許を取得することを特許出願人が意図していたことの立証の程度は軽くなり、

 提出されなかった情報の重要度が低いときには、それを隠して特許を取得することを特許出願人が意図していたことの立証の程度は重くなる、
 のです。
特許出願人等が開示するべき情報の重要度(materiality)とは

(d)重要度が問題であると言っても、例えば同一発明について日本国特許庁にした特許出願(いわゆる対応外国出願)の審査の拒絶理由通知において、審査官が特定のクレームの発明について引用例1と引用例2と引用例3との組み合わせから容易に発明できた胸の拒絶理由通知を発した場合に、一部の引用例を特許出願人が勝手に重要ではないとして、提出しないことは、するべきではありません。

 引用例1は主引用例、引用例2は、特許出願人の発明の構成のうちで主引用例に欠ける事柄を開示する副引用例、引用例3は、引用例1と引用例2との組み合わせに際して参考とするべき周知技術を示す参考例である、ということは有り得ることですが、引用例1〜3の全部を引用して一つの拒絶理由通知ですから、拒絶理由の内容とともに引用例1〜3を全て提出するべきです。

(e)特許出願人が開示義務を十分に果たしていない場合には、特許権を行使できないだけでなく、逆に相手側から、そうした特許権の行使によりダメージを受けたとしてUnfair Competitionのカウンタークレームを受ける場合があります。
→特許出願人のフロードのケーススタディ1-B



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