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1327 特許出願人等の開示情報の重要度/進歩性 |
体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
特許出願人等が開示するべき情報の重要度とは(米国) |
意味 |
特許出願人等が開示するべき情報の重要度とは、当該出願人等が自ら知り得た先行技術等の情報が特許出願について特許を受けるために必要である程度に技術的な観点から重要であることを言います。
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内容 |
@特許出願人等の情報開示義務の意義
(a)米国への特許出願人及び当該出願の準備・手続に実質的に関与した者(代理人を含む)は、当該特許出願においてクレームされた発明の特許性に関連して(義務者が)自ら知り得た情報を米国特許商標庁に提出する義務を負います。
→特許出願人等の情報開示義務とは(米国)
(b)この義務を怠ったときには、特許権を行使することができなくなり、かつ特許出願人等のフロードが成立し得るために、情報提供義務違反を追及することは、特許侵害事件の被告側から原告を攻撃する方法の定番となっており、そのために、義務の中身に関しても裁判上の争点とされることがありました。
(c)情報提供義務は、“特許出願しようとする発明が特許を取得できるか否かについて重要であり(material)かつ知っている(known)情報”に適用されますが、“重要”とは何かに関しても議論されてきました。そうした議論を裁判の判決の中から紹介します。
@特許出願人等の情報開示義務の意義
725 F.2d 1350 (AMERICAN HOIST &
DERRICK COMPANY v.SOWA & SONS, INC.,)は、特許侵害事件(請求棄却)の控訴審です。
[事件の概要]
American Hoist and Derrick Co.,
(Amhoist)は、大荷重用シャックルの発明を特許出願した発明者から特許権を譲り受け、そしてSowa & Sons, Inc
(Sowa)が当該特許権を侵害したとして損害賠償を求めて提訴しました。
Sowaは、特許発明は発明時に知られた先行技術から見て自明であるから特許は無効であると主張するとともに、特許出願の手続において(先行技術の不開示による)フロードが成立すると反撃しました。
→特許出願人によるフロードのケーススタディ(PTOに対する)1−A
地方裁判所では、陪審はフロードの成立を認めましたが、これに関して原告はフロードに関する陪審説示の内容が間違っていることを控訴理由に掲げて控訴裁判所で争いました。
[控訴裁判所の判断]
裁判所は、(特許出願の審査に重要な先行技術を開示するべきという開示義務に関して)重要度(materiality)について少なくとも3つの要件を用いていることに留意するべきである。
(1)客観的な“but for”(もし〜しないのであれば)スタンダード
(2)主観的な“but
for”スタンダード
(3)“but it may have”スタンダード
Plastic
Container Corp. v. Continental Plastics of Oklahoma, Inc., 607 F.2d
885, 899,を参照せよ。
三番目のスタンダードは、問題となる事象が“特許要件についての審査官の決定に合理的な影響を与えたか”を問いかけるものである。Gemveto
Jewelry Co. v. Lambert Bros., Inc.,
“but it may
have”スタンダードに非常に類似する別の公的なスタンダードも存在する。PTO規則1.56(a)では前述の重要度(materiality)に言及している。その規則によれば、情報は“合理的な審査官が特許出願を許可して特許を生じさせるか否かを決定するに際して大事(important)であると考える可能性があれば重要(material)である”とする。
PTOのスタンダードは、重要度の議論の出発点として適当である。何故なら、それ自体が最も広いために他のスタンダードを含んでおり、かつ、重要度の境界線として実務家がPTOに対してなすべきことを明確に示しているからである。
しかしながら、単一のスタンダードによって拘束されると考えるべき合理的な理由はない。PTOにおけるフロードに関する問いの答えが最初から最後まで(begin
and end with)重要度だけで片がつくということはないからである。また重要度が他の考慮要素と関係しないという保証もない。
前述の重要度に対する問いかけと有過失性(culpability)に対する問いかけとは相互に関連し合い、かつ絡み合っている。
従って後者(有過失性)に関して、意図的に詐取(defraud)する企みが確定したときには、前者、すなわち隠された情報の重要度の説明(showing)は軽くて良い。
他方、後者に開示しなかったことが不当(wrongful)であるという影響が認定されるためには、前者、すなわち隠された情報の重要度の説明の程度は重くなる。Digital
Equipment Corp.v.Diamond,653 F.2d 701.
従って、例えば客観的な“but
for”の問いかけが適切な証明度の下で満たされるのであれば(→standard of
proof(証明度)とは)、情報の重要度に関して、たとえある人物が有効性の法的解決を予測し損なうことにとりわけ無頓着でなかったとしても、特許の無効又は行使可能性の根拠となる意図の事実の説明の程度は軽くなる。
これとは逆に、合理的な審査官が特定の情報は大事であるが特許出願を拒絶するか否かの決定に関して重大(crucial)ではないと考えるであろうと立証(demonstrate)されたときには、重大な怠慢や無謀が説明されることが(特許の無効などの結論を導くために)要求されるであろう。こうした場合には、“誠実な判断”(good
faith judgement)や“うっかりしたミス”(honest mistake)の主張が良い防御方法となる。
[コメント]こうした判決理由から控訴裁判所はケースを地方裁判所に差し戻しました。
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