体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
Utilityとは(特許出願の要件としての) |
意義 |
Utility(有用性)とは、実社会において実質的に役立つことを言い、新規であること及び特許対象主題(プロセス・機械・生産物・物質の組成物等)であることと共に、米国特許法第101条に掲げる特許要件です。
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内容 |
①Utilityの意義
(a)社会に対して有用な発明をした者は、国家に対して特許出願(発明の保護を求める意思表示)を行い、かつ特許出願の際に当該発明の内容を明細書・図面に記載して開示することにより、特許出願の実体審査(新規性・進歩性等の審査)を経て、発明の公開の代償として一定期間に限り特許権を付与されます。
そして特許権の存続期間が満了したときには、特許の対象であった発明は、社会の公共財産として、公衆の自由な実施に供されます。これが特許制度の基本的な原理です。
(b)ここで新規性・進歩性等を特許要件とするのは、既に社会に公開された発明や公開された発明から容易に考え出すことができる技術を保護することは、社会の役に立たないからです。
(c)しかしながら、公開済みの発明やこれから容易に考え出すことができる技術ではなくとも、社会の役に立たない、有用ではない発明も存在します。
例えば、用途が不明の化合物の発明のようにです。こうしたものを特許制度の保護対象から除外するために、Utility(有用性)が特許要件とされています。
(d)この要件は、下記の米国特許法第101条の条文中の“useful”という文言から導かれます。
“Whoever invents
or discovers any new and useful process, machine, manufacture, or
composition of matter, or any new and useful improvement thereof,
may obtain a patent therefor, subject to the conditions and
requirements of this title.”
(新規かつ有用なプロセス・機械・生産物・物質の組成物に関して、或いはこれらの新規かつ有用な組み合わせに関して発明又は発見をした者は、この章に定める条件及び要請に従うことを前提として、それらについての特許権を取得することができる。)
②Utilityの内容
(a)MPEP
(特許出願の審査のためのマニュアル)2107によれば、特許出願人の発明が有用性を具備するためには、“specific,
substantial and credible (特定的で実質的であり、かつ信憑性がある)”ことが必要である、とされています 。
(b)Specific
utilityとは、請求項に記載された主題に対して特定的であり、よく限定された(well-defined)、公衆に対する特別の利益を生ずることをいいます。
例えば新たに解明された人間の遺伝子のシーケンスであり、それが何の役に立つのか判らないようなものは、有用性の欠如により、特許出願を拒絶される理由となります(In
re Fisher)。 →Specific Utilityとは(特許出願の要件に関して)
(b)Substantial
utilityとは、リアルな社会利用(real word
use)が可能であることをいいます。例えば前述の遺伝子のシーケンスは、一種のタグ[EST(expressed sequence
tag)]として研究者が将来行う研究のために利用できる可能性が高いですが、それだけではリアルな社会利用にはなりません。
→Substantial Utilityとは(特許出願の要件としての)
(c)Credibe
utilityとは、特許出願人が主張する有用性が特定的かつ実質的でありながら、何らかの理由で世の中に役立つものとして信用できないときに問題となる要件です。
例えば船舶の動力に使用できる永久機関の如きであり、特定の用途
(船舶)に実質的な目的(動力源)で使用できることが明らかであっても、技術常識からすれば、特許出願人が自然法則を誤認している可能性が高いからです。こうしたものは、実際に試作機を作って実験すると、例えば一定時間動力を出力した後に内部に蓄えられたエネルギーが尽きて停止しまうのが通常であり、特許出願人が主張する効果(永久に動力を出力する)を発揮できないのが通常だからです。
→Credible Utilityとは(特許出願の拒絶理由としての)
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