内容 |
①仮登録の意義
(a)特許制度は、特許出願人が開示された発明を公開する代償として、一定の期間に限って当該発明に対する保護を与える制度ですが、その保護の方法として所有権の制度の手法を借用しています。借用した手法の一つが不動産の登記制度です。
登記制度は、国が不動産(土地及びその定着物)の所有者を明らかにすることで不動産の帰属を巡る争いを回避するためのものであり、登記の態様として本登記及び仮登記という考え方を導入しています。
例えば売買の予約をした場合であって、買主が未だ所有権を得ていない段階で予約者としての権利を確保する必要がある場合に、仮登記が行われます。
(b)特許原簿に対する仮登録は、仮登記を参考として、特許に関する権利の本登録の順位を確保するために導入された制度です。
すなわち、特許登録令第8条には、“仮登録をしたものについて本登録をしたときは、その順位は、仮登録の順位による。”と規定されています。
②仮登録の内容
(a)特許法第98条第1項には、
・一般承継を除く特許権の移転等、
・専用実施権の設定等、
・特許権又は専用実施権の設定等
に関しては、登録しなければ、その効力を生じないと定めています。
ここでいう「登録」とは本登録であって、仮登録をしただけでは効力を生じません。
但し、仮登録をしたときには、本登録が行われたときに仮登録のときに遡って効力が生じます。
(b)例えば特許権の譲渡契約を行う場合に、契約自由の原則により予約契約の形をとることは自由です。例えば本年度の末で事業を打ち切るので、その後に特許権を譲渡するというような場合です。予約権者としては、予約が完結するまでの間に特許権者の死亡により特許権が相続され、第三者に譲渡されるなどにリスクを考慮して、仮登録をしておくというメリットがあります。そうすることで予約完結後に特許発明の事業を開始するための投資を安心して行うことができるという利益があります。
(c)専用実施権の設定等に関しても同様に仮登録を行うメリットがあります。
例えば将来のある時点(例えば特許権者と第三者とのライセンス契約が終了するまで)は専用実施権を設定できないような場合に、その時点以後に専用実施権を設定することに関して仮登録をしておくことが考えられます。
なお、特許出願中の発明については、特許権の設定登録を受けるまでは専用実施権を設定することができません。この場合には、特許出願人は、仮専用実施権の設定登録を行うことができます。
→仮専用実施権とは
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