体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
Mutatis mutandisの用例(条文上の) |
意味 |
Mutatis
mutandisとは、ラテン語において、“必要により修正を加えて”と言う意味であり、“適用”(apply)と組み合わせて準用という意味に用いられます。
ここでは、法律の条文上の用例に関して説明します。
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内容 |
①Mutatis mutandisの意義
(a)外国(特にヨーロッパ及び米国)の条文の解釈上、“Mutatis
mutandis”とは、ある条文を、当該条文が想定していない別の場面に対して、“変更するべきところは変えて”適用するという意味です。
例えば特許出願の係属中の状態と特許権が成立した状態では、法律的な効果、その他さまざまな観点が相違するのですが、条文の種類によっては、その一方の場面を想定した規定が、他方の場面に適用できる場合があります。
(b)こうした場合に、“Mutatis mutandis”という用語が用いられます。
②Mutatis
mutandisの内容
(a)条文そのものではありませんが、欧州特許庁の審査ガイドラインのE部(4)には次の規定があります。
・Transfer
of the European patent
(欧州特許の移転)
Rule 22 applies
mutatis mutandis to the registration of a transfer of the European
patent during the opposition period or during opposition
proceedings.
(欧州特許条約規則22は、異議申立期間又は異議申立手続の間での欧州特許の移転の登録について、必要に応じて修正を加えて、適用する。)
ちなみに欧州特許条約規則22の内容は次の通りです。
・Registration of transfers
(移転の登録)
(1) The transfer of a European patent
application shall be recorded in the European Patent Register at the
request of an interested party, upon production of documents
providing evidence of such transfer.
欧州特許出願の移転は、
利害を有する当事者の請求により、当該移転の証拠が提出されることを条件として、欧州特許登録原簿に記録される。
(2)
The request shall not be deemed to have been filed until an
administrative fee has been paid. It may be rejected only if
paragraph 1 has not been complied with.
(前記請求は、手数料が支払われるまでは、行われたものとは見做されない。当該請求は、前記第1パラグラフの条件が満たされない場合に限り、拒絶される。)
(3) A transfer shall have effect vis-à-vis the European Patent
Office only at the date when and to the extent that the documents
referred to in paragraph 1 have been produced.
(前記移転は、第1パラグラスで言及した文書が作成された日付及び範囲に限って、欧州特許庁に対して効力を有する。)
(b)Mutatis mutandisという用語は、条文だけでなく、判決文にも散見されます。
以下は、米国の裁判所が特許侵害の損害額を定める際の目安となる有名なスタンダード(ジョージア・パシフィック・ファクター)を提唱したときの文章です。
The following are some of the factors mutatis mutandis seemingly
more pertinent to the issue herein:
(以下は、適当な修正を加えることにより(mutatis
mutandis)、ここでの論点{合理的なロイヤリティの算定}に関連し得る要因である。)
1. The royalties
received by the patentee for the licensing of the patent in suit,
proving or tending to prove an established royalty.
(訴訟対象である特許のライセンスに基づいて特許権者がこれまで受領したロイヤリティであって、既に確立されたロイヤリティを立証する或いは立証しよう意図するもの)
特許侵害の損害額を算定するときには、損害の最低額として合理的なロイヤリティを算定することが定石であり、合理的なロイヤリティの決定には、同じ特許に関して、例えば複数の第三者に対して同じロイヤリティ率でライセンスを許諾している場合に、そのロイヤリティ率を確立された基準とすることができます。
既に成立したライセンス契約が一件だけであったり、或いは特許出願中の段階でライセンス契約をした場合には、通常は、確立されたロイヤリティとは言えませんが、ライセンサーが同じロイヤリティ率で進んで契約に応ずるであろうと推察できる何らかの事情(例えばそのロイヤリティ率でライセンス契約をする旨を一般に公表しているなど)がある場合には、上記1のファクターを準用することができます。
→ジョージア・パシフィック・ファクターとは
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留意点 |
契約上の用法に関しては下記を参照して下さい。 →Mutatis
mutandisの用例(契約上の)
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