体系 |
行政行為 |
用語 |
保全処分 |
意味 |
保全処分は、紛争を解決するまでの間に、権利保全のために,裁判所によって行なわれる暫定的処分であり、狭義には民事保全法に規定される仮処分及び仮差押えを指します。
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内容 |
@保全処分の意義
(a)狭義の保全処分は、判決手続による権利の確定が遅れることで生ずるリスクを防止するために迅速に与える仮の救済処理であり、具体的には仮処分及び仮差押えがあります。
仮処分とは、係争物に関する給付を目的とする請求権の執行保全、及び、争いがある権利関係に関する仮の地位を定めることを目的とする手続です(→仮処分とは)。
仮差押えとは、金銭債権又は金銭債権に変えることができる請求権のために、債務者の財産を確保し、将来の強制執行を保全する手続を言います。
A保全処分の内容
(a)特許出願に対して特許権が付与されると、特許権者は、正当な権限なくに特許発明を業として実施した者を特許権の侵害で訴えることができるとともに、擬似侵害品の製造・販売の停止を求めて仮処分の申立をすることができます。
(b)但し、特許権者は、次のことを疎明しなければなりません。
・被保全権利が存在すること。
・保全の必要があること(→保全の必要性とは)。
(c)特許権侵害に対する保全処分の特殊性として、保全手続の相手方が特許無効審判を請求する可能性があることを挙げることができます。
例えば特許出願の日に公開されていた先行技術に基づいて当業者が容易に発明できたと旨の無効理由(進歩性の欠如)で特許が無効となると、特許権が最初から存在しなかったものと見做され、保全の処分をしたときとは事情が変更したと言う理由で(→事情の変更とは)、当該処分を取り消す決定がされる可能性があるのです。但し、この決定に対しては抗告をすることができます(→抗告とは)
(d)また仮処分が取り消された後に当該仮処分により生じた損害を賠償することを求められる場合もあります。 →仮処分のケーススタディ1
損害賠償請求が認められるかどうかは、仮処分の申し立てに故意または過失があったかどうかで判断されます。
特許権を付与する前に特許出願の要件(新規性・進歩性など)に関して審査官が実体審査を行います。従って、審査の範囲で引用された先行技術に基づいて特許が無効とされた場合には、もともと、特許をするべきかどうかの判断が難しかったことになり、仮処分の申立に対して権利者に過失があったことの証明は困難でしょう。
しかしながら、前記審査の範囲から漏れた先行技術に基づいて特許無効の審決が出された場合には、その先行技術の存在を特許出願人又は特許権者が知っていたか、或いは、知ることが容易であったかなどを総合して、過失の有無が判断されることになります。
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