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227 進歩性審査基準(特許出願の要件)/課題 |
体系 |
実体法 |
用語 |
課題の共通性 |
意味 |
課題の関連性は、特許出願に係る発明の進歩性判断において当該発明に引用例から到達する動機付けの一つであり、課題が関連する引用例同士には相互に結び付く契機が存在すると考えられます。
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内容 |
①進歩性審査基準には“課題が共通することは、当業者が引用発明を適用したり結び付けて請求項に係る発明に導かれたことの有力な根拠となる。”と記載されています。
②例えばラベルが仮着されている台紙を所定位置に停止させる点で同一の技術課題を有する引用例1~2に関して、その技術的課題を解決するために引用例1のラベル送り制御手段を引用例1に適用することは、当業者ならば容易に想到し得たことである、と判断した事例があります(平
2(行ケ)182)。
③引用発明が、請求項に係る発明と共通する課題を意識したものでなくても、その課題が自明な課題であるか、容易に着想しうる課題である場合には、動機づけが認められる可能性があります。
④特許出願に係る発明とは別の思考過程により、当業者が請求項に係る発明の発明特定事項に至ることが容易であったことが論理づけられたときは、課題の相違にかかわらず、請求項に係る発明の進歩性を否定することができます。
この具体例として、進歩性審査基準は、米国特許出願の事例ですが、カーボンディスクブレーキ事件を挙げています[596
F. 2d 1019(201USPQ658)]
本件発明は、有孔材料であるカーボンディスクブレーキの摩擦面に放射状の溝を設けて、ブレーキ中に素材から放出される水を溝を介して外へ逃がし、摩擦面の濡れで摩擦抵抗が低下することを防止するもの、引用発明2が金属製ブレーキの摩擦面に放射状の溝を設けて、摩擦面から生ずる埃を溝を介して外方へ逃がし、摩擦抵抗の低下を防止するもの、引用文献1はカーボン製ディスクブレーキの発明です。
引用文献2のカーボン製ディスクブレーキは制動中に埃を生じないので引用文献1のブレーキの溝を適用する動機付けがないという言い分が通用すればよいのですが、埃を水に置き換えることで、別の思考過程による略同様の論理付けが成立します。
なお、特許出願人は、“ある技術の欠点を発見して改良することは、仮に欠点が既知であれば自明の程度の改善でも特許性がある”という先行判例の考え方(Phair
doctrine)を援用して、カーボン製ディスクから生じた水が摩擦抵抗を低減することの発見に困難性があると主張しましたが、その現象を発見したのが特許出願人であるという証拠がないと判断され、進歩性は認められませんでした。
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