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334 進歩性審査基準(特許出願の要件)/当業者2 |
体系 |
実体法 |
用語 |
通常の知識を有する者の意味合い |
意味 |
特許出願の請求項に係る発明の進歩性は、当該発明の技術分野において通常の知識を有する者(いわゆる当業者)を基準として判断されます。
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内容 |
@“通常の知識を有する者”は、まず請求項に係る発明の技術分野における特許出願時の技術常識を有することを必要です。例えば技術を転用するときには、用途に合わせて一部変更をして技術を適用することがあります。その場合に、その変更が設計的事項(設計変更)かどうかは技術常識に照らして判断する必要があります。
Aまた“通常の知識を有する者”は、研究・開発のための通常の技術的手段を用いることができることを必要とします。技術開発を行うための実践的な知識だからです。
Bさらに“通常の知識を有する者”は、材料の選択や設計変更などの通常の創作能力を有する者でなければなりません。
用途に合わせて材料を選択すること(使い勝手を向上するために軽い材料を選ぶ・コスト軽減のために廉価な材料を選ぶなど)、或いは用途に応じて設計変更をすること(例えば子供の悪戯防止のために意図的にスイッチの操作を複雑とすることなど)は、当業者が日常的に行うことであり、こうした自然的な技術の進歩を超えて、飛躍的な進歩をもたらすものでなければ、特許出願に独占権を与える必要がないからです)。
Cさらにまた“通常の知識を有する者”は、請求項に係る発明の属する技術分野の特許出願時の技術の全てを自らの知識とすることができるものです。
実際問題として実際の技術者が特許出願時の最新情報を含めた全ての技術を把握しているとは限りませんし、逆に古過ぎる技術も知らない可能性があります。しかしながら文献的に知り得る技術である限り、それは社会の共有財産であり、それら全ての技術を自らの知識として創作の基礎とできる者が進歩性の判断主体となります。
Dまた進歩性審査基準によれば、特許出願の請求項に係る発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)は、発明が解決する課題に関連した技術を自らの知識とすることができます。
判例上では、関連する技術分野を「技術的観点から類似する技術分野」と称する場合があります。例えば、平成7年(行ケ)第5号(替え刃式鋸における背金の構造事件)や平成8年(行ケ)第103号(スロットマシンに装着できる打止解除装置事件)では、次の見解が示されています。
“技術の転用の容易性は、ある技術分野に属する当業者が技術開発を行うに当たり、技術的観点から類似する他の技術分野に属する技術を転用することを容易に着想することができるか否かの観点から判断すべきである。”
E“通常の知識を有する者”は、個人ではなく、複数の技術分野の専門家のチームと考えた方がよい場合があります。例えば電子マネーのビジネスモデルの発明において、経済の専門家とコンピュータ技術の専門家のチームとを想定するような場合です。
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