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引用発明の内容中の示唆 |
意味 |
引用発明の内容中の示唆は、特許出願に係る発明の進歩性判断における発明に対する動機づけであり、当業者が特許出願の請求項に係る発明に導かれたことの有力な根拠となります。
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内容 |
@示唆の第1の態様は、特許出願に係る発明の課題が従来技術の欠点などの形で記載されていることです。
例えば回路用接着部材の発明において、接着成分であるビスフェノールF型フェノキシ樹脂をビスフェノールA型フェノキシ樹脂に置換することはF型とA型との性質の類似性などから容易とした審決を取り消した事例があります。
先行発明の課題は相溶性及び接着性の向上、本件特許出願に係る発明の課題は接続信頼性及び補修性の向上であって発明の目的が異なります。
審決は、特許出願に係る発明とは別の課題(相溶性及び接着性の向上)からA型の接着成分という構成に辿りつくことができるとしました。
しかし裁判所は、引用文献はF型の接着成分は相溶性及び接着性が良好である旨を記載しており、格別、相溶性及び接着性に改善が必要である旨の示唆はなかったと判断しました。→平20(行ケ)10096号
A示唆の第2の態様は、特許出願に係る発明の課題解決手段が間接的に示されており、技術常識又は引用文献中の記載と組み合わせると、課題解決手段に到達できる場合です。
(イ)進歩性審査基準に挙げられた2つの事例を挙げます。
(ロ)一方の事例は、発明特定事項である物(水性電着浴用の金属イオン)を、引用発明の内容中の示唆(電位列中の電位が金属の電位より高い)から選ぶ事例です。
→引用発明の内容中の発明の示唆のケーススタディ1(物の選択)
(ハ)他方の事例は、発明特定事項である位置(置換基の位置)を、引用発明の内容中の示唆(置換基の実施例及び置換の可能性への示唆)から選ぶ事例です。
→引用発明の内容中の発明の示唆のケーススタディ2(位置の選択)
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留意点 |
引用文献には、発明に対する示唆及び阻害要因が同時に記載されている可能性があり、特許出願人は、引用発明の全体を考慮して進歩性の有無を判断する必要があります。そうしないと、後知恵(ハインドサイト)的な論法を避けることができないからです。
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