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230 進歩性審査基準(特許出願の要件)/示唆・阻害要因 |
体系 |
実体法 |
用語 |
発明に対する示唆及び阻害要因 |
意味 |
発明に対する示唆は、進歩性の判断において、特許出願に係る発明の課題解決手段に到達するための道しるべであり、他方、阻害要因は、特許出願に係る発明の内容とは異なる方向へ当事者を導く開示です。
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内容 |
①「発明に対する示唆」と「阻害要因」とは、進歩性の判断において正反対の働きをするものですが、実際には両者が混沌として引用文献に開示されていることがあります。
②アメリカの古い判例ですが、383 U.S. 39[U.S. v Adams]では、電池の発明において、液体容器中に挿入した二種類の電極の一方を銀からマグネシウムに置き換えることが当業者にとって容易かどうかが問題となりました。
(イ)引用文献は電極としてマグネシウムを採用することの理論上の可能性に言及していましたが、同時に商業的に利用し得ない失敗例であるとしていました(電池を回路に接続していない開放状態で電極反応が進行してしまうため)。
(ロ)裁判の当事者は、引用文献の開示事項のうち都合のよい部分を取り出して発明の進歩性を否定しようとしましたが、裁判所はそうした主張を認めませんでした。
(ハ)電極反応が勝手に進行してしまうという不具合は一般的な電池に対しては本質的な不利益であり、当業者が容易に解消できるものではありませんでした。
(ニ)アダムスは、軍用の電池などでは一度に使い切ってしまう場合があることに着眼し、電池を構成する容器に注水口を設け、使用する直前に液体(水)を入れるということで上述の不利益を解決しました。
③新しい素材を新しい用途に使用することの可能性に言及した事例に関して、進歩性審査基準では、「ゴルフクラブ」事件(平成7年(行ケ)第152号)を挙げています。
(イ)登録実用新案に対する無効審判で、本件考案は、シャフトにウイスカー強化複合材料で形成したゴルフクラブであり、衝撃耐性や軽量性を効果としていました。
(ロ)引用文献は、繊維強化プラスチック(FRP)に関する記事であり、その用途の一つとしてゴルフクラブを挙げるとともに、「ガラス繊維以外の補強材料として、ホイスカー、炭素繊維等の出現がある。
(ハ)これらは、FRPを軸とする複合材料の開発研究に広がりを与えてくれる様子だが、なにぶんにも高価な材料であり、その特性を相当に熟知しないと使い切れない」旨が記載されていました。権利者は、ゴルフクラブに採用する材料はさまざまな特性が必要とされるので、上記の記載は本件考案の構成に到る示唆には足りない、「使い切れない」という言葉からも容易想到性を認めるべきではないと主張しましたが認められませんでした。
(ニ)何らかの不利益を阻害要因とするためには、本質的でありかつ一見したところ回避できない不利益でないと、審判官や裁判官を納得させることは難しいと考えられます。
④まとめると、特許出願に係る発明の進歩性判断において、引用発明は全体として考慮して、技術的要素の意味を評価するべるべきであり、一部を取り出して考察することは後知恵(ハインドサイト)となる可能性があります。
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留意点 |
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