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①特許調査で見つけた刊行物中に特許出願の請求項の発明に容易に到ることを妨げるほどの記載があれば、引用発明としての適格性を欠いています。しかしながら、発明の課題が異なるなど、一見論理付けを妨げるような記載があっても、技術分野の関連性や作用・機能の共通性等、他の観点から論理付けが可能な場合には、引用発明としての適格性を有しています。
いわゆる阻害要因の問題です。例えば成分A・Bから成る物質を熱分解する技術に関して、Bを分解するための加熱条件に関する引用文献から、Aを分解する熱分解するための加熱条件を導き出すことは、必ずしも当業者にとって容易ではありません(→昭和62年(行ケ)第155号)。特許出願の発明に到るための手掛かりがないからです。しかしながら、一つのルートで動機付けがなくても、別のルートで動機付けがあれば、進歩性は否定されます。
②周知・慣用技術は拒絶理由の根拠となる技術水準の内容を構成する重要な資料ですので、引用するときには、それを引用発明の認定の基礎として用いるか、当業者の知識又は能力の認定として用いるかに拘わらず、審査官は、例示するまでもないときを除いて可能な限り文献を示すべきです。
意見書において、特許出願の請求項に係る発明と引用発明との相違点を指摘して反論したが、審査官がそうした相違は周知・慣用であり、設計変更に過ぎないとして、拒絶査定されることがあります。しかしながら、一見すると、設計技術であるように見えたも作用・効果が違っていることがあるので、特許出願人は、よく内容を検討するべきです。
③本願の明細書中に特許出願の前に従来技術として記載されている技術は、特許出願人がその明細書中で従来技術の公知性を認めている場合には、特許出願当時の技術水準を構成するものとして、これを引用して請求項に係る発明の進歩性の判断の基礎とすることができます。
従って明細書の従来技術の欄を記載するときには、正確に記載することが必要です。先行技術文献に文章で記載された事項と、特許出願人が図面に表して願書に添付することは避けるべきです。描き手の想像による構成が混入する可能性があるからです。
④特許出願に係る発明を、いわゆるマーカッシュ形式で記載された請求項[構成要件(A1orA2orA3or…)+B+C+…から成る発明]で特定した場合、形式上又は事実上の選択肢A1、A2、A3…の何れか一の選択肢のみを発明特定事項として進歩性を否定する論理付けを行い、論理付けができたときには進歩性が否定されます。
⑤商業的成功などは、進歩性の存在を肯定的に推認するのに役立つ事項として参酌されます。
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