内容 |
①包袋禁反言の原則は、もともと特許出願の経過において意見書や補正書により示された出願人の意図にを想定して唱えられた考え方ですが、必ずしもこれに限定されません。
②早期審査の事情説明書での陳述にも包袋禁反言の原則が適用される可能性があります(平成14年(ワ)3292号「階段構造」事件)。予め拒絶理由通知に挙げられそうな先行技術について特許出願人が陳述を行い、審査官がそれを信じて権利にしたのであり、審査官からのアクション(拒絶理由通知)がなかったからといって、その陳述と矛盾する権利の主張を認めるべきでないからです。
③無効審判での特許権者の意見に包袋禁反言の原則が適用された事例もあります(「連続壁体の造成工法」事件)。すなわち、無効審判で「原告が、『複数機のオーガの並列の回動により0度を含む所定の角度を介在させる』ことだけで達成されるとの趣旨の意見を述べているにもかかわらず、本訴訟を提起した後に、右意見を翻して、『ベースマシンの旋回と回転式リーダーの回転を組み合わせることによる手段』が構成要件Dに含まれると主張することは、禁反言の原則により許されないというべきである。」と判断されました。
④訂正審判での陳述にも包袋禁反言の原則が適用される可能性があります。訂正審判に関して、“当該訂正は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものでなければならない。”旨の規定があり(126条第7項)、訂正審判中に特許権者が提出した意見書の内容を信じて訂正を認めた場合には、特許出願の拒絶理由通知に対して意見書を提出した場合と同じことだからです。
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