体系 |
特許出願の審査 |
用語 |
包袋禁反言の原則の適用範囲とは(異なる特許出願での事情) |
意味 |
異なる特許出願に生じた事情に関して、包袋禁反言の原則が適用される範囲に関して説明します。 →{包袋禁反言の原則の適用範囲とは(同一の特許出願の事情)}
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内容 |
@包袋禁反言の原則がどこまで適用されるのかという点は、国によって考え方が異なるので、よく注意する必要があります。しかしながら、我が国では、特許発明の技術的な範囲は、特許請求の範囲の記載により定め、その記載の意味内容を明細書・図面を参酌して解釈するということを基本としており、特許出願人が示した意図は参考資料に過ぎません。
A同一の特許出願で生じた事情についてこうした考え方なのですから、その特許出願と一定の関係にある別の特許出願で生じた事情に関しては、さらに慎重に考えるべきです。
B平成8年(ワ)1597号「サーマルヘッド」では、分割出願の審査において原出願の審査の事情が考慮できるかという点に関して次のような判断を示しました。
(イ)分割出願に係る発明と分割後の原出願の発明は、別個独立のものであるから、分割出願に係る発明の技術的範囲を確定するのに原出願の発明の出願経過を参酌することは原則として相当でないと解される。
(ロ)ただ、分割出願に係る特許権の成立が原出願と密接な関係にある場合において、分割出願の際に既にもととなった原出願の願書に添付された明細書又は図面の意味内容が原出願の出願経過の参酌により明らかになるような例外的な場合に限り、原出願に係る発明の出願経過を参酌することができる。
Cまた平14(ワ)9503号「核酸増幅反応モニター装置」事件では、特許出願人が、同一出願人の後願発明(改良発明)が先願の優先権主張の基礎となった米国特許出願に記載された発明より優れる旨の主張をし、後に先願特許権の特許発明の技術的範囲に関して、それと異なる主張をしても、禁反言の原則は適用されないと判断されました。
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留意点 |
@に関して、米国特許出願の実務では、包袋禁反言の法理について、「複数の特許が同一の基礎出願から派生している場合、成立したいかなる特許のクレーム構成要素に関する審査経過も、同じクレーム構成要素を含むその後に成立された特許に対しても、同様の効力が生じる。」という判断が示されています(Elkay事件 192
F.3d 973)。
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