体系 |
実体法 |
用語 |
記載されているに等しい事項とは(新規性) |
意味 |
刊行物に記載されているに等しい事項とは、当業者が技術常識を参酌することで刊行物に記載されている事項から導き出せる事項をいいます。
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内容 |
@進歩性の判断主体である当業者は、機械的に仕事をする自動人形ではなく、創作能力を持った人であります。従って“刊行物に記載された事項”の解釈においても、刊行物に記載された事項そのものの他、“記載されているに等しい事項”が含まれます(新規性・進歩性審査基準)。
Aすなわち、“刊行物に記載された事項”の解釈に際しては、技術常識を参酌することができ、特許出願時における技術常識を参酌することにより当業者が刊行物に記載されている事項から導きだせる事項も、刊行物に記載されているに等しい事項として、刊行物に記載された発明の認定の基礎とすることができます。
B例えばプリント配線の技術において引用発明中の端子板を貫通したシールド板が、アースされていることが、当該引用文献中に全く記載されていなくとも、“シールドというとそれがアースに落とされている”と解釈することが当該技術分野での技術常識であるので、上記シールド板をアースに記載した事項は、引用発明に記載されているに等しい事項と解釈されます。何故なら「刊行物に記載された考案(発明)」とは、刊行物の記載から一般の当業者が了知しうる技術思想をいうと解釈するのが相当だからです。
→昭和56年(行ケ)第93号(多回路スイッチ事件)
C技術常識を参酌しても刊行物をに記載された事項から導きだせない事項は、“記載されているに等しい事項”とはいえません。引用文献に具体的な物が記載されている場合に、技術常識から裏づけられる範囲を超えて、具体的な物を無理に上位概念化しようとすることは、できません。
例えば、引用例の実施例において、クエン酸の同効物として溶媒に不要な具体的な物(酸性成分)が記載されており、当該技術分野では従来酸性成分として溶媒に不溶なものが普通に使用されている場合には、実施例には、溶媒に不溶な物質を使用することが示されていると見るに過ぎないのが相当です。従って引用文献には溶媒に可溶なものを選定することを示す記載があるとみることはできません。
→昭和55年(行ケ)12号 →記載されているに等しい事項の事例1
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留意点 |
Bの事例では、特許出願人自身が上記シールド板はアースに落とされていない旨を意見書で述べているから、引用文献はアースに落とされたシールド板を開示したものとはいえない旨が主張されましたが、裁判において採用されませんでした。引用文献は意見書とは別個の文書であり、普通、引用文献を見る人は引用発明に係る特許出願の出願経過を参酌して引用文献に記載した発明特定事項の技術的意義を確認するようなことはしないからです。
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