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354 新規性/(特許出願の要件)/刊行物/情報 |
体系 |
実体法 |
用語 |
刊行物の情報性 |
意味 |
刊行物の情報性とは、特許出願の実体的要件である新規性の判断の基礎となる刊行物において、その内容自体が広く第三者が情報として流通するべき性質であることをいいます。
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内容 |
@刊行物の情報性は、昭和53年(行ツ)第69号(一眼レフ・カメラ事件)で示された刊行物の定義(公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書、図画その他これに類する情報伝達媒体)から導かれます。通常、特許出願の審査や訴訟において刊行物該当性が争われるときには、刊行物の公開性と情報性とがセットであり、“公開を目的として作成されておらず、情報性もない”ということが多いです。しかしながら、現実には、公開の時期が定められており、その時期に至らないので、情報が第三者に流通する態勢にはないという場合があります。
A訴訟において、情報性の有無が論点となった裁判例を挙げます。
(イ)情報性が否定された事例(平成13年(行ケ)第466号)
新製品(採血管自動準備システム)の設計、企画、製造及び販売を3社で行ったケースで、新製品第1号の売り込み前にその一社から他社へ配布された仕様書が争点になりました。訴訟の当事者が“仕様書の表紙を代えれば直ちにユーザーへ頒布され得るから、刊行物に該当する”と主張しましたが、裁判所は、新製品の売り込みに用いられるために作成されたものだから、広く第三者に流通することを予定したものであるとはいえないと判断しました。上記仕様書は、注文を確定させるための提案書であり、提案を拒否されれば内容が変更し得るのですから、その段階で刊行物としての役割を認めることができないと考えられます。
(ロ)情報性が肯定された事例(平成12年(ワ)第16531号)
製品(眼科医用手術装置)の購入者に付属物として提供されるマニュアルが争点となりました。訴訟の当事者は、当該製品が高価であってマニュアルを実際上入手する者が限られていることを理由として、第三者に広く流通されるべき性質(情報性)を有しないと主張しましたが、裁判所は、マニュアルを入手することについて別段の制限があったものと認めることができないとして、情報性があると判断しました。
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留意点 |
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