内容 |
@進歩性審査基準によれば、特許出願の請求項に係る発明と主引用例との相違点が材料の最適選択・数値範囲の最適化・単なる設計的事項又はこれに類する程度であれば、進歩性を推認できる根拠がない限り、これは当業者の通常の創作能力の範囲です。この場合には、審査官は、主引用例のみで進歩性を否定することができますが、相違点がその程度を超えるときには、きちんと副引用例を示して、進歩性を判断しなければなりません。
Aその判断の手順は、第1に、特許出願に係る発明(A+B+C)と主引用例の発明(A+B or
A+B+D)との相違点(C)を開示する副引用例が発見する、第2に、そうした副引用例を主引用例に適用する(要件Cを付加するor要件Dを要件Cに置き換える)ことが容易かどうかを判断する、ことになります。
B“容易かどうか”は、主引用例に副引用例を適用することに結びつく着想の契機が存在するかによって判断します。例えば、発明の構造におけるメカニズムの共通性、技術的思想の共通性、発明の課題の共通性などは着想の契機となる可能性があります。
例えば判例では、粉末圧縮成型機に係る特許出願の進歩性の判断において、主引用例が錠剤成形機であり、副引用例が煉瓦成型機である場合に、両者を結び付けることを容易と認めた例があります。成型物の用途が全く異なるので一見すると別の技術という印象を受けますが、粉末を圧縮する原理が共通するために、主引用例に副引用例を適用することが容易と判断されたのです(→昭57(行ケ)86号)。
Cそして課題の共通性などがある場合には、主引用例に副引用例を適用することに創造的工夫や合理的な範囲を超える試行錯誤があるかを検討し、そうした事情がなければ、進歩性がないものと判断されます。
|