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364 進歩性審査基準(特許出願の要件)/引用発明 |
体系 |
実体法 |
用語 |
引用発明の認定 |
意味 |
引用発明の認定とは、公知発明、公用発明、文献公知発明の技術的内容を、証拠に基づき、必要により技術常識を参酌しつつ、確定することをいいます。
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内容 |
①進歩性審査基準によれば、出願発明及び引用発明をそれぞれ認定した上で、論理付けに最も適した一の引用例(主引用例)を選び、出願発明の発明特定事項と主引用発明の発明特定事項の一致点及び相違点を明らかにして、主引用発明や他の引用発明(副引用発明)・技術常識から出願発明に対して論理の構築を試みるとしています。
②進歩性審査基準は、公知発明や公用発明の認定においては、証拠おいて説明されている事実の解釈にあって、特許出願時の技術常識を参酌できるとしています。
(イ)講演・説明会で公知となった事項は、言葉が省略されている可能性があり、技術常識で補えば理解できる事柄に関しては技術常識を参酌することが妥当です。
(ロ)また機械装置・システムにより公用となった発明については、それら機械装置から導き出せる情報を、技術常識を参酌しつつ解釈することができます。
③文献公知発明の認定においては、特許出願時の技術常識を参酌することにより刊行物に記載された事項から導き出せる事項(刊行物に記載されているに等しい事項)も引用発明の発明特定事項として認定することができます。
④しかしながら、未完成発明は引用発明として認定することができません。
平成10年(行ケ)第401号(即席冷凍麺類用穀粉事件)において、「特許出願に係る発明が特許法第29条の2第1項により、特許を受けることができないとされるためには、上記『当該特許出願の日前の他の特許出願に係る発明』は、発明として完成していることを要するものとするべきである。そして、発明が完成したというためには、その技術手段が当該技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていることを要し、かつ、これをもって足りるものと解釈するべきである。」としています。
→用途発明のケーススタディ1
この解釈は新規性や進歩性の解釈に引き継がれています。すなわち、新規性・進歩性審査基準には、次のように記載されています。
「ある発明が、当業者が当該刊行物の記載及び本願出願時の技術常識に基づいて、物の発明の場合はその物を作れ、また方法の発明の場合はその方法を使用できるものであることが明らかであるように刊行物に記載されていないときは、その発明を「引用発明」とすることができない。したがって、例えば、刊行物に化学物質名又は化学構造式によりその化学物質が示されている場合において、当業者が本願出願時の技術常識を参酌しても、当該化学物質を製造できることが明らかであるように記載されていないときは、当該化学物質は「引用発明」とはならない」
⑤新規性・進歩性審査基準によれば、引用発明が下位概念で表現されている場合には、上位概念で表現された発明を認定できます。例えば“鉄製のコップ”という記載からは、“金属製のコップ”を認定できます。
⑥他方、引用発明が上位概念で表現されている場合には、下位概念で表現された発明を認定できます。これは、引用文献に記載された発明特定事項のうちの下位概念(引用文献に記載されていないものに限る)を選択することで、異質の効果などを発揮する選択発明(例えば温血動物に毒性を示さない殺虫剤)が成立する可能性があるからです。
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