体系 |
実体法 |
用語 |
アグレゲーション |
意味 |
アグレゲーションとは、物の集合であってそれぞれの物が独自性を保っているものを指す言葉であり、米国特許出願などの進歩性の判断に使用される用語です。
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内容 |
①一般に発明は複数の技術的事項(発明特定事項)が結びついて一個の技術的思想として成立します。米国の判例では、複数の技術的事項が個々に公知である場合の組み合わせ特許の進歩性の判断において、それら技術的事項が結びついて新しい又は異なる機能や働き(new or different function or opereation)を発揮するときにはcombinationといって進歩性を認め、そうした新しい又は異なる機能や働きを発揮しないときにはaggregation(湊合)と呼んで進歩性を認めていません。
②aggregationに関する判例
(イ)340 US 147(A&T Tea Co., v Supermarket Corp)
買物の清算を行うためのチェッカー・カウンターであって、複数の作業員に清算作業を分業させるために一方向へ長く延長したカウンターと、カウンダーの上で商品を長手方向へ押して移動するためのスライド式フレームとの組み合わせに組み合わせに関して、新しい又は異なる機能を発揮しないと判断されました。
(ロ)425 U.S.273 (サクライダ事件)
牛糞を洗浄するために、酪農用施設の床に勾配を設けることと、一気に水を放水することとの組み合わせに関して、新しい又は異なる機能を発揮しないと判断されました。
③但し、組み合わせの特許が自明であるとするためには、組み合わせに対する示唆が、解決するべき課題の性質それ自体の中、先行技術の教示の中に、或いは当業者が有する知識の中に存在しなければなりません。そうした示唆がなければ組み合わせを試みることが自明(Obviois to Try)とは言えません。上述の例においては、例えばバケツに貯めた水を勢いよく地面に流して汚れを流すことは大昔から人間がやっていることですし、またその地面が傾いていることも当然あったでしょうから、それを酪農用施設に当てはめても、新しい又は異なる機能が生まれるということにはなりません。
④この事例では、傾斜面を水が流れるとき地面と水との摩擦により水の粒子が回転して汚れを効果的に除去することを“新しい又は異なる機能”として主張しようとしたようですが、たとえそういう現象が起こるとしても、傾斜面にバケツで水を撒いたときにも同じことが起こるでしょうから、その機能は新しくもないし、従来と異なるものでもありません。
特許出願をする時点で的確に特許調査をして従来の技術を把握し、新しい又は異なる機能が発揮されるための条件(発明特定事項)を見つけておかなければなりません。
⑤なお、(ロ)の事例では、権利者側が発明品の商業的成功を以て進歩性を肯定しようとしましたが、成功しませんでした。こうした主張は、発明の作用・効果を審査官が不当に低く評価する(ハインドサイト)ことに対する反論とすべきであって、もともと“新しい又は異なる機能”がないときに、単に商業的成功だけを主張してもよい結果は生まれません。
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留意点 |
日本の進歩性基準によれば、発明を特定するための事項の各々が“機能的又は作用的に関連していない”場合に、発明が各事項の単なる組み合わせ(単なる寄せ集め)であるとしています。そしてこの場合には、他に進歩性を推認できる根拠がない限り、その発明は当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内であると判断されることになります。
→単なる発明の寄せ集めとは(進歩性判断のケーススタディ)
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