体系 |
実体法 |
用語 |
afterthought |
意味 |
Afterthoughtとは、特許出願に係る発明の効果の後付けのことをいい、例えば発明の進歩性を主張するために行われるものをいいます。
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内容 |
①Afterthoughtと語感が似ている言葉として、Hindsightがあります。日本語でいうとどちらも“後知恵”と訳することができますが、似て非なるものです。Hindsightは審査官が特許出願に係る発明の進歩性を否定する方向にbias(先入観)を持つこと、具体的には、例えば引用発明の構成を変更したり、引用発明同士を組み合わせるために必要な知識を、その特許出願の明細書から借用することです。これに対して、Afterthoughtは、特許出願人が進歩性を否定する拒絶理由通知に対抗するために、本来設計的事項程度である引用例との相違点に関して、当初予定していない作用・効果をこじつけることです。
②例えばグラハム判決では、農地を耕すための掘削具付きのシャンクの基部を、クランプを介してフレームを介して取り付ける技術において、クランプのうちフレームへ取り付けるための板体を基部の上側へ取り付けるのか下側へ取り付けるのかが主要な相違点となりました。特許出願人は、訴訟において初めて取り付け箇所の相違により本願発明はシャンクの“free-flexing”(自由にしなる)という独自の作用をすると主張しましたが、裁判所は、その主張を退けました。本当に”free-flexing”の理論が正しいのかも、どの程度の効果を奏するのかも分からないし、そもそもそれが発明の重要なポイントであれば明細書に記載している筈ではないのかということです。
③日本でも類似の事例があります。例えば平9年(行ケ)第198号では、本発明の対象である“無線呼出用受信機”の上板と底板をアンテナとして広い面積を有するループ導体として通電接続することで、“動作インピーダンスを低くすることができる”という効果を奏すると明細書には記載されていました。特許出願人が拒絶査定審決取消訴訟で主張した“上板と下板とを2箇所で通電接続することによってアンテナの共振周波数を変えること”という効果を主張しましたが、こうした効果は明細書には記載されておらず、明細書・図面から推論しようとしても、そもそも何のために共振周波数を変えるのか、そのためには共鳴周波数をどの程度変える必要があるのか、ということが判りません。
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留意点 |
日本特許庁の進歩性審査基準には、次のように記載されています。
(イ)明細書に引用発明と比較した有利な効果が記載されているとき、或いは、明細書・図面の記載事項から当業者がそうした効果を推論できるときには、意見書等において主張・立証された効果を参酌する。
(ロ)明細書に記載されておらず、明細書・図面の記載から当業者が推論できない意見書等で主張された効果は、参酌できない。
その技術的特徴に関して、特許出願のときに内容を掘り下げ、効果を発揮するための条件を見い出すことが重要です。
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