体系 |
特許出願の審査 |
用語 |
包袋禁反言の原則と補正 |
意味 |
包袋禁反言の原則は、特許出願の請求項の補正があった場合に、均等論の適用範囲を制限する方向に働くことがあります。
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内容 |
@包袋禁反言の原則は、均等論の適用範囲を公平を害しない程度に規制する役割を有し(→包袋禁反言の原則と均等論)、その役割は、特許出願人が請求項の補正をした場合にも働きます。具体的には次の通りです。
(イ)請求の範囲を減縮する場合
典型的な例として、特許出願人が先行技術との差別化を図るために、発明の要件A+Bを、要件A+B+Cに減縮した場合には、特許出願人が放棄した発明の範囲について均等論を根拠として権利を主張することはできないと覚悟するべきです(参考図)。
(ロ)請求の範囲を変更する場合
発明の要件AをA’に置き換えるような場合です。たとえば平14(ネ)5092号「混合装置付バケット」事件では、拒絶理由通知に対応してクレームの文言を「格子状開口部」から「スリット状開口部」へ補正した以上、縦棒と横棒とで形成される開口部を有する被告製品に関して権利を主張することはできないとした事例があります。先行技術を回避するために補正したことが代表的なケースですが、必ずしもこれに限られるものではありまません。
A包袋禁反言の原則は、本来出願の経過に現れた事実を参酌するものですが(∵包袋−出願の一件書類を納める袋)中の意見書・補正書・上申書をも参酌する趣旨)、訂正審判についても同様に適用されます(平10(ワ)7191号「筆記具のインキ筒」事件)。
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留意点 |
先行技術を回避するための補正以外の補正による包袋禁反言の原則の適用に関しては、議論のあるところです。
(イ)例えば請求項に「引き裂きに対して抗力のある」を追加する補正に関して、請求項を明確にする補正であるという原告の主張を認めて包袋禁反言の適用を拒否した事例があります(平12(ワ)20946号ティシュペーパー用包装箱事件)
(ロ)他方、一旦行った訂正を、新規事項の追加に当たると指摘されて削除する再訂正をしたのちに、禁反言がかかった事例もあります(前述の筆記具のインキ筒事件)。
(ハ)いずれにしても、個々の事例を安易に一般化するべきではなく、具体的事情から信義則に反するのかを検討するべきであると考えます。
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