内容 |
①特許出願の請求項の記載が明確である場合
請求項に係る発明の認定は請求項に記載された通りに行いますが、請求項に記載された用語(発明特定事項)の意味内容が明細書及び図面において定義又は説明されている場合は、その用語を解釈するにあたってその定義又は説明を考慮します。
そうしなければ、請求項の解説欄としての明細書の役割を果たせないからです。ただし、請求項の用語の概念に含まれる下位概念を単に例示した記載が発明の詳細な説明又は図面中にあるだけでは、ここでいう定義又は説明には該当しません。
②請求項の記載が明確でなく理解が困難である場合
明細書及び図面の記載並びに特許出願時の技術常識を考慮して請求項中の用語を解釈すれば請求項の記載が明確にされる場合は、その用語を解釈するにあたってこれらを考慮します。
新規性進歩性審査基準は、この点に関して次の判例を挙げて説明しています。
(イ)明細書の技術用語は学術用語を用いること、用語はその有する普通の意味で使用することとされているから、明細書の技術用語を理解ないし解釈するについて、辞典類等における定義あるいは説明を参考にすることも必要ではあるが、それのみによって理解ないし解釈を得ようとするのは相当でなく、まず当該明細書又は図面の記載に基づいて、そこで用いられている技術用語の意味あるいは内容を理解ないし解釈すべきである。(平成6年(行ケ)78号「自走式オーグ装置」事件)
これは、「ブラケット」について、「機械用語辞典」の定義(「フレームや機械本体から突出していて、軸、てこなどをささえる目的に用いられる部分、または部品をいう。腕木、腕金ともいう。」)を援用して、“ブーム4とアーム6は本体であり、ブラケット8はこの本体に突出して設けられた部品である”とした審決の認定は、明細書・図面の記載に適合しないので誤りとした事例です。
(ロ)「特許請求の範囲」の記載に用いられている技術用語が通常の用法と異なり、その旨が「発明の詳細な説明」に記載されているとか、「特許請求の範囲」に記載されているところが不明確で理解困難であり、それの意味内容が「発明の詳細な説明」において明確にされているというような場合等に、これら用語、記載を解釈するに当たって、「発明の詳細な説明」の記載を参酌してなすべきであるのはいうまでもない。(昭和41年(行ケ)62号)。
③請求項の記載に基づき認定した発明と明細書又は図面に記載された発明とが対応しないことがあっても、請求項の記載を無視して明細書又は図面の記載のみから請求項に係る発明を認定してそれを審査の対象とはしません。
④明細書又は図面に記載があっても、請求項には記載されていない事項(用語)は、請求項には記載がないものとして請求項に係る発明の認定を行います。
⑤反対に、請求項に記載されている事項(用語)については必ず考慮の対象とし、記載がないものとして扱ってはならないとされています。
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