パテントに関する専門用語
  

 No:  412   

進歩性審査基準(特許出願の要件)/容易想到性

 
体系 実体法
用語

容易想到性

意味  容易想到性とは、当業者が新規性を喪失した発明に基づいて容易に発明できることをいい、発明の進歩性と反対の概念を示す用語です。


内容 @発明の進歩性は、当業者が新規性を喪失した発明に基づいて容易に発明できないことであり、一般には、発明を成し遂げることに技術的な困難性を伴うものです。しかし、困難性という言葉はやっかいでこれを進歩性の判断基準としてしまうと、困難性の意味や程度について議論を生ずる可能性があります。古いアメリカの判決では、発明は天才のひらめき(Flash of Genius)により成り立つという見解がありましたが、そうすると多くの試行錯誤・実験を経て成立したアイディアは特許として値しないのかという疑問が生じます。故にその後に“発明がなされた態様により特許性を否定されない”という判例の変更があり、上記の見解は判例として失効しています。

Aそこで判例及び進歩性審査基準は、容易に想到できる→格別の困難性がないという立場を採ります。

 「本願発明の『費用及び空間を節約』という課題は、混合機に限らず、あらゆる装置についていえる一般的な課題、つまり、装置の構成を考える場合における自明な課題にすぎない。そしてこの課題と軸上減速機及びモータ付き減速機の前記特徴とを併せて考慮し、引用発明1の混合機を前記自明の課題に従って占有面積を節約しようとして、引用発明4に記載された前記軸上減速機及びモータ付き減速機を採用することは、当業者であれば容易に想到できたことであり、そこに格別の困難があるということができない。」(平成4年(行ケ)第142号

Bさらに進歩性審査基準は、進歩性の基本的な考え方として、次のように述べています。

 “進歩性の判断は、本願発明の属する技術分野における特許出願時の技術水準を的確に把握した上で、当業者であればどのようにするかを常に考慮して、引用発明に基づいて当業者が請求項に係る発明に容易に想到できたことの論理づけができるか否かにより行う。”→進歩性の判断の基本的な考え方

Cこのように論理付けに容易想到性の概念を導入するとともに、容易想到性を判断する具体的な手法を提示しています。

(イ)通常の創作能力の範囲である場合には、容易想到性あり。

(ハ)発明に至る動機付け(課題の共通性、技術分野の共通性、作用・機能の共通性、引用文献中の特別の示唆の存在)があることは、容易想到性が認められる。

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