内容 |
@特許出願に係る発明(請求項にの進歩性の判断主体は、いわゆる当業者ですが、実際にそれを判断するのは審査官です。その立場や現実の判断時期の違いによって、事後分析的な思考(ハインドサイト)に陥る可能性が大きく、それを戒めるために進歩性判断の基本的な考え方が進歩性判断基準に記載されています。
A“論理付け”という用語は、馴染みのない言葉だと思います。進歩性を有しない発明を保護対象から除外するための一種のテストと考えると分かり易いかも知れません。審査官個人の恣意を排除するための手段です。進歩性の判断をテストする手法は、米国特許出願の実務で常用されています。TSMテストとか、グラハムテストなどがあります。日本の特許出願の進歩性判断の実務では、技術的な観点(課題の共通性・技術分野の共通性・作用機能の共通性・引用発明の内容中の示唆)から進歩性の有無をテストします。
B“特許出願時の技術水準を的確に把握した上”というのは、特許出願後の時点では容易に発明できたように見えるが実はどうではないということがあるからです。例えば発明の課題が長年存在していながら不実施だったことは、進歩性を肯定的に評価する材料となります。
Cまた“当業者であればどうするのかを常に考慮して”と断るのは、特許出願の明細書などから表面的に判断すると、一見創作容易であるように見えて実はそうではないということが少なくないからです。
D特許出願の出願書類には発明の解決すべき課題と課題を解決するための手段が並べて書いてありますので、勢い審査官はその程度の工夫は当たり前のことと捉え勝ちです(いわゆるコロンブスの卵)。
E故に進歩性の判断においては、当該特許出願の明細書から知り得たアイディアが、その公知発明等から特許出願に係る発明に想到し得たことの論理付けに混入しないように、後知恵(ハインドサイト)的な思考を極力排除する必要があります。
特にハインドサイトにより本願特許出願に係る発明と引用発明との相違点を設計変更とみなすことがないように、発明の技術的な意義や機能などに着目する必要があります。
|