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416 特許出願の要件(外国)/先例拘束性の原理・長所 |
体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
先例拘束性の原理の長所と短所 |
意味 |
先例拘束性の原理(doctrine of binding precedents)とは、英米法において裁判所(最高裁判所を除く)は、十分に事案が類似した事例の裁判例に拘束されるという原則です。ここでは先例拘束性の原理の長所及び短所について述べます。
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内容 |
①先例拘束性の原理の短所の一つは、“過去の事例に拘束されるので時代の変化に対応しにくい”という点が挙げられます。
(イ)例えば米国特許出願の実務では、進歩性の基準が厳しくなっていった時期がありました。
(ロ)すなわち旧特許法では非自明性(進歩性)の規定そのものがなかったのですが、1850年のホッチキス判決で非自明性の概念を導入して、材料変更程度の簡易な創作(我国の進歩性審査基準では設計的事項にあたるもの)では特許を受けることができないとされ、1941年のCuno Engineering v. Automatic Devices事件では、「天才のひらめきがある発明に特許を認める」という判断が示されました(現在は先例として効力なし)。
(ハ)技術の進歩につれてひらめきの有無だけでは困難性を測れない(例えば物の構成から結果を予測することが困難であるなど)場合がありますから、技術の流れと逆行するような判例の傾向があったのです。
②さらにたとえ裁判所が変化に対応して判例を修正しようとしても、個別・具体的な事例に対して細切れの修正となるため、先例が時代を経るに従って中身が複雑になるという傾向があります。
③その反面、先例拘束力の原則によると、判決の予期可能性が高まり、特許出願人にとっては、時間とお金の節約になる(特許になる可能性の低い発明について特許出願したり、請求項をたてたりすることを回避できる)という長所があります。
例えばKSR判決後では、TSMテストの他に予期可能な結果を生ずる技術的要素の組み合わせや置換、試みることが自明な事柄も、非自明性を否定する合理的な根拠となり得る旨がMEPEに追加されました。特許出願人にとっては判断基準がより具体的になったことは歓迎するべきことです。もっとも上記②で述べたように判断基準が複雑化したとも言えますが。
→先例拘束性の原理とは(意義)
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留意点 |
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