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@非自明性(進歩性)が否定される事例の典型例として、複数の公知の技術の組み合わせであって単なる設計変更(設計的事項)に過ぎないものが挙げられます。問題の性質に応じて、複数の技術を合わせて用いるのは普通に行われることだからです。例えば食品を製造するときに製造物や食材が痛まないようにするという如くです。
A例えばDIPPIN DOTS INC v.
MOSEYという訴訟は、アイスクリームの製造方法に関する米国特許出願に対して特許が付与され、侵害事件でその非自明性が争われました。
(A)請求項に係る特許は次の通りです。
A method of preparing and storing a free-flowing, frozen alimentary dairy product, comprising the steps of:
流動性の凍らせた日常の栄養食品を製造しかつ貯蔵する方法であって次のステップを含む。
(1)preparing an alimentary composition for freezing;
栄養成分を凍らせるために製造すること。
(2)dripping said alimentary composition into a freezing chamber;
その栄養成分を冷凍チェンバーに対してドリップすること。
(3)freezing said dripping alimentary composition into beads;
その栄養成分を凍らせてビーズ状にすること。
(4)storing said beads at a temperature at least as low as -20° F. so as to maintain said beads free-flowing for an extended period of time;
それらのビーズを、相当期間ビーズの流動性が保たれるようにするために、少なくとも−20°Fで貯蔵すること。
(5)bringing said beads to a temperature between substantially -10° F. and -20° F. prior to serving; and
(消費者に)提供する前に、それらビーズの温度を実質的に−10°Fから−20°Fの間に設定すること。
(6)serving said beads for consumption at a temperature between substantially -10° F. and -20° F. so that said beads are free flowing when served.
提供した状態でビーズが流動性をもつように実質的に−10°Fから−20°Fの間でそれらビーズを提供すること。
(B)先行技術との相違点は、第4の行程(製造したアイスクリームを冷蔵室に保管すること)ですが、裁判所は、アイスクリームの製造方法の先行技術に、製造されたアイスクリームを低温する技術を結合することは、解決しようとする問題の性質から当然に動機付けが存在する。上記製造方法に接した当業者は、当然に製造物を保存するに適した温度を探すだろうからである、と判断しました。
Bさらにこの判決では、次のように説明しています。
我々の先例は、発明の自明性を論ずるときに、複数の引用例を結び付けるための教示・示唆・動機付けをテストすること(TSMテスト)を求める。このテストは、柔軟なテストであり、当業者の技術分野又は解決しようとする問題の性質の範囲で知識を結び付ける動機付けを探すことができる。
(Our precedent requires that the party urging obviousness demonstrate a teaching, suggestion, or motivation to combine references. C.R. Bard, Inc. v. M3 Sys., Inc., 157 F.3d 1340, 1351
(Fed.Cir.1998). This test is a flexible one which may find motivation to combine in the knowledge of one skilled in the art or in the nature of the problem to be solved.)。
C日本の進歩性審査基準でも、“自明な課題”又は“容易に着想し得る課題”に基づく動機付けが可能である旨が述べられています。“自明な課題”は、ある特定の技術の分野だけでなく、広範な技術にも適用できるものですが、概念的にthe nature of the problemと共通する点が多いと考えらえます。
Dnature of the problemは、公知の技術要素A、Bの組み合わせ(A+B)が知られていないが、導き出すのは容易という文脈であるのに対して、殆ど知られているに等しいというニュアンスで使われる言葉として“notorious knowledge”があります。 →notorious knowledgeとは
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