体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
clear and convincing proof |
意味 |
Clear and convincing proof(明白で説得力のある証明)とは、アメリカ合衆国の民事訴訟で物事を立証する際に要求される立証の程度(→standard of proof)の一つであり、民事訴訟の原則的な証明度(50%を超える確からしさ)よりも高く、刑事訴訟のそれ(合理的な疑いの余地のない証明)よりも低い程度です。
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内容 |
@アメリカ合衆国の民事訴訟の原則的な証明度は、証拠が示す事実の確からしさが50%を超越すること(preponderance of evidence)に置かれます。また訴訟手続きではないですが、USPTOにおける特許出願の審査やReexamination(再審査)の手続における判断基準もこれに準ずると言われています。
Aこれに対して裁判所が特許の有効性を判断するときには、もう一段高い基準―明白で説得力のある証明―が要求されるのです。
Bその理由は、米国法(35 U.C.S. 282)では「特許は有効なものであると推定される。」と定めており、最高裁判所は、この「推定」の意味を、これを覆すためには明白かつ説得力のある“強い推定”であると解釈しているからです。→Microsoft v. i4i Limited Partnership
(イ)こうした規定が置かれた理由は、技術の専門官庁であるUSPTOの判断を尊重するためと言われています。
(ロ)上述の特許出願の審査やReexaminationの場合にはUSPTO自身の判断であるため、“明白で説得力のある証明”という基準が要求されないのです。
C“明確で説得力のある”証明により特許が無効となった事例として、いわゆるグラハム判決を挙げます。→383 U.S.1 (I)
(イ)グラハムは、荒野を耕すプロー装置(本体から後方へ多数の掘削具付きのシャンクを突出し、本体をトラクターなどで引いて掘削するもの)のシャンクをつかんで本体へ固定する取付部(クランプ)に関する技術に関して先行特許及び後発特許を有しており、後者が前者から自明であるので無効と判断されました。
(ロ)クランプは、本体の底部へ固定した上側の不動部分に可動部分(下側)をピボット連結してなり、2つの特許との主たる相違は可動部分に対するシャンクの位置を変えたということだけです。
先行特許 クランプの不動部分(上)−シャンク(中間)−クランプの可動部分(下)
後発特許 クランプの不動部分(上)−クランプの可動部分(中間)−シャンク(下)
(ハ)裁判所は、前者から後者が自明であるという立証を明確で説得力があると判断しました。何故ならクランプを介してシャンクを本体に固定するとすれば、取り付けることができるのは可動部分の上か下かしかなかったからです。
(ニ)なお、特許権者側はシャンクを可動部分の下にすることでfree-flexingが可能となるという主張をしましたが、裁判所を納得させることはできませんでした。この効果が明細書のどこにも書いてなかったため、効果の後出し(afterthought)だと思われたのです。
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留意点 |
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