内容 |
@構成重視の発明の構成(課題を解決する手段)は、技術的思想の創作である発明の本質であるから、発明の進歩性の問題は、結局は構成の難易の問題に帰着するから、構成自体から困難性が生じ得ないときには、発明の目的や効果に関して引用文献に記載していないときには、進歩性を認めることができないという考え方です。
→発明の構成とは
A事例1
昭48(行ケ)142号「嵩高糸製造装置」
{事件の種類}拒絶査定不服審決取消請求事件
{請求項}
仮撚を附与する装置と加熱装置との間に冷却液体を附与する装置及びその下方に圧縮気体を噴出する装置を設けたことを特徴とする嵩高糸製造装置。
{主引用例との一致点・相違点}
本願発明と第1引用例のものとが、仮撚附与装置と加熱装置との間に冷却液附与装置を設けた嵩高糸製造装置である点で一致し、本願発明においてだけ、冷却液附与装置の下方に圧縮気体噴出装置が設けられている点で相違する。
{副引用例}
第2引用例には湿潤した繊維に圧縮空気を噴出させて水分を吹き飛ばす水切装置が記載されている。
{特許出願人(又は特許権者)の主張}
(イ)嵩高糸製造装置において気化熱を冷却に用いることは従来行われず、第二引用例によって示唆されていないのみならず、本願発明の圧縮気体噴出装置は気化熱の利用を超えた効果を奏するものである
{裁判所の判断}
(ロ)第2引用例には湿潤した繊維に圧縮空気を噴出させて水分を吹き飛ばす水切装置が記載されているのであるから、嵩高糸製造装置において冷却液附与装置から仮撚装置、加熱装置などの上に滴下する冷却液を飛散させて障害発生を防止するため冷却液附与装置の下方に圧縮気体噴出装置を設けることに思い当るのに格別の困難があるとは考えられない。
(ハ)(上記(イ)に対して)気化熱を冷却に用いるという周知技術を嵩高糸製造装置において利用することは、その技術内容自体に鑑みると、これを直接示唆する文献がないからとて容易に想到しえないものではなく、また、これによって生じる効果も、液体滴下防止を含め原告主張のものは、その性質上、すべて右技術から当然予測される範囲を出るものではないというべきである。
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