体系 |
特許出願の種類 |
用語 |
複数優先のケーススタディ(国内優先権+パリ条約優先権) |
意味 |
複数優先とは、特許出願人が複数の優先権を主張することです。ここでは、国内優先権とパリ条約優先権とを同時に主張する事例に関して、優先権の主張が認められるケースと主張が認められないケースとを挙げて、ケーススタディします。
→複数優先(国内優先権の場合)
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内容 |
①発明は一度に完成するものではなく、一つの着想を得た後にも改良を加えたり、アイディアを上位概念化したり、実施例を豊富化することで完成に近づいていくものです。発明者にとっては、アイディアが外部に漏れていない特許出願の前後の期間は、追加の研究開発を行うための貴重な時間です。(パリ条約)優先権は、(最初の)出願の日から1年間(優先期間)内に起きた出来事により、同一人が他の国にした特許出願や実用新案登録出願を不利に扱わないという特別の利益であり、そして国内優先権を導入した我国においては、パリ条約優先権と国内優先権とを併用することにより、最初の出願の日から1年間の優先期間を十分に利用することができます。
②優先権の主張が認められる場合(事例1A)
(a)手続の概要
・甲は、パリ条約の同盟国であるA国に発明イについての特許出願1を行い、
・これに基づいてパリ条約優先権を主張して、我国に対して、発明イ及び発明ロについての特許出願2を行い、
・さらにA国への特許出願1及び我国への特許出願2に基づいてそれぞれ優先権を主張して、発明イ・発明ロ・発明ハについての特許出願3を行いました。
(b)特許出願1の出願から1年以内に特許出願2~3を行うことを条件として、特許出願3での複数優先権の主張は認められます。
(c)ここで特許出願1に基づく優先権主張も行うことが重要です。それを省略して特許出願2に基づく優先権主張のみをすると、発明イに関して優先権の利益を享受できません。→優先期間の延長禁止(国内優先権)
③優先権の主張が認められない場合(事例1B)
(a)事例1Aと異なるのは、
・特許出願3を行う前の、A国への特許出願1について拒絶処分が確定したことと、
・発明イ及び発明ロについての特許出願2と発明イ・発明ロ・発明ハについての特許出願3との間に、同盟国であるB国に対して発明イ及び発明ニについての特許出願4が行われたこと
です。
(b)そこで甲は、我国への特許出願2及びB国への特許出願4に基づいて優先権を主張して、発明イ~ニについての特許出願3を行いました。
(c)この場合には、発明イについて特許出願4に基づく優先権の主張は認められません。「最初の」出願であることがパリ条約優先権を主張する条件だからです。
(d)この場合には、発明イに関しては、既に拒絶処分が確定している特許出願1に基づいて優先権を主張しなければいけません。
パリ条約の優先権は、最初の出願に基づいて認められるものであり、「最初の出願」とは、結果の如何を問わずに出願内容や内容を確定できれ足りるからです。
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留意点 |
③に関して、国内優先権の場合には、逆に特許出願や実用新案登録出願が特許庁に係属している必要があります。 →複数優先のケーススタディ(特許出願+実用新案登録出願)
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