パテントに関する専門用語
  

 No:  474   

特許出願の要件/新規性/公然/不特定人

 
体系 実体法
用語

不特定人

意味  不特定人とは、発明者のために秘密にすべき義務を負わない人間をいい、発明者のために秘密にすべき義務を負う人間(→特定人)に対する用語です。


内容 ①特許出願が許可される要件として発明の新規性があります。具体的には、特許出願のときに当該発明が公然と知られていないことなどが要求されます。

 もっとも、特許出願をする段階に至るまでに、発明者とは別に社内の人間が発明の開発に関わったり、発明が特許性を有するかを専門家に相談したり、特許出願用の図面を業者に外注したり、ということがあります。
従って、発明者以外の一切の人間に知られたときに新規性を喪失するとすることは現実的ではありません。

 そこで不特定人が発明を知ったときに新規性を失うこととしています。

②発明者のために秘密保持義務を負わない人間が不特定人となります。たとえば大学の講義で大学教授が自分の発明を教材として講義を行った場合、特別の約束がない限り、受講者は秘密保持義務を負うとは言えないので、不特定人として取り扱われます。

 →秘密保持義務とは

③発明を知った者の数は原則として関係ありません。不特定人が一人でも知れば新規性を喪失する反面、多数の特定人が発明を知っても新規性を喪失しません。


留意点 ③に関して、「公然」という用語は、刑法でも用いられることがあります。例えば名誉棄損罪や侮辱罪などです。この場合、公然性とは、“不特定又は多数の者が認識できる状態”を指すと解釈されるようですが、特許法では事情が異なります。

 例えば大企業では、多数の研究チームが独立に同一の課題の研究に携わることがあります。そうした場合に、同じ会社内の多数の人間が発明を知っていたことを以て新規性が喪はん失されるとすることは妥当でないからです。

古い判決では公然性を“多数不特定が発明を認識した状態”を判断しているものもありますが(→秘密保持義務)、今は、不特定人が1名なので公然ではないとは考えません。


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