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485
進歩性(特許出願の要件)/客体的基準/失敗例・経済的事情 |
体系 |
実体法 |
用語 |
失敗例の引用文献適格性・その2(経済的な事情) |
意味 |
他人の発明が経済的な理由で失敗とされた事例を、進歩性を否定する引用例とすることの適格性を検討します。
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内容 |
@一般に他人の失敗例は、そのままでは進歩性を否定する根拠として、引用例適格性に欠けています。失敗の原因として何等かの技術的困難性があったと予想されるからです。
Aしかしながら、他人の発明が経済的な理由(実施にコストがかかり過ぎるとか、業界共通の規格に適合しないなど)の事情で実施されず、失敗とされる場合があります。
Bこの場合には、発明としては成立しているのであり、特許出願の請求項に係る発明の進歩性を論ずる上において引用例としての適格性に問題はありません。
C判例では、昭56(行ケ)25号「生化学的酸化廃水処理方法」事件において次のように述べています。これは特許出願に係る拒絶審決取消請求事件です。
「引用例には原告の指摘するとおり『このプロセスが生物学的に又は経済的にいかに有望であろうとも、実施不可能にしてしまつた。』と記載されてはいるけれど、引用例全体の記載に照らせば、右によつて意味されていることは、引用例において開示された高濃度酸素雰囲気を使用しての活性汚泥プロセスは、酸素のコストが高いため在来の活性汚泥プロセスに代わるべきものとしては到底採算がとれず、その実施は経済的には正当視されないというにとどまり、引用例に自然法則を利用した技術的思想の創作が開示されていることをなんら否定するものではない。原告の主張は理由がない。」
→失敗例の引用文献適格性
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留意点 |
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