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 パテントに関する専門用語
  

 No:  487   

特許出願の査定後/特許権/利用発明

 
体系 権利内容
用語

利用発明

意味  利用発明とは、他人の先願(先行する特許出願・実用新案登録出願・意匠出願)の権利内容を利用する発明をいいます。


内容 @特許法は、発明の保護と利用とを図ることで、発明を奨励し、産業の発達を図ることを目的とします。そして発明の利用には、文献的な利用実施による利用とがありますが、この2つの利用態様の何れもが利用発明の取り扱いに密接な関わりを持ちます。

 すなわち、特許出願の内容が公開されて、技術開発の基礎となり、そして先願である特許出願の請求項に係る発明の構成要件をそっくり含み、或いは、実施の際に先願発明を必然的に実施する創作したものが、利用発明です。そうすると、利用発明とは文献的な利用の結果物である(或いはそうであることが多い)と言えます。

 しかしながら、先の特許出願等の権利者との関係で利用発明の活用の途を確保するのは、実施による利用です。

 仮に利用発明を実施できなければ、誰も資金を投入して研究・開発をしようとしませんので、利用発明において文献的利用及び実施による利用は車の両輪のように重要です。

 そこで特許法は、特許法第71条により利用発明の実施を規制するとともに、同92条の裁定制度により、利用発明の実施の途を開いています。

A利用発明の態様

 一般に思想上の利用発明実施上の利用発明との2種類があると言われています。
利用発明の態様とは

 特許の活用を図るためには、利用発明の態様を的確に把握する必要があります。

B「利用」の概念

(イ)特許法上の「利用」は“模倣”とは異なります。すなわち、他人の特許出願等に係る権利内容の存在を知らなくても、結果として、利用関係があれば(→利用関係とは)が客観的に存在していれば、利用発明となります。

 特許権は、模倣の有無を問わずに効力が及ぶ絶対的独占排他権であるからです。

(ロ)「利用発明」というときには、相手の特許出願等の権利内容となんらかの相違があることが前提となります。

 例えば要素A+B+Cからなる先願発明に対して要素A+B+Cからなる利用発明、或いは、物の発明に係る先願発明に対してその物を製造する装置に係る利用発明の如くです。

(ハ)なお、例えば相手の登録意匠と権利内容が全く同じである場合には、“権利の抵触”として処理します。

 利用の概念と抵触の概念を使い分けたのは、前者にのみ利用発明を実施するための裁定制度を適用するためです。

B先願の権利内容の対象・範囲

(a)他人の特許出願などの権利内容が対象となります。自己の権利であれば権利同士の衝突を生じないからです。

(b)特許出願の日前の出願に係る権利内容が対象となります。

  仮に、他人の特許出願に係る発明よりも、自分の特許出願に係る発明の方が先に創作されたものであっても、特許出願の時が後であれば、自分の創作の方が利用発明として扱われます。

 特許法は、先願者を有利に扱う先願主義を採用するからです。

C共有者の利用発明

 特許権の共有の場合には、各共有者は別段の定めをしない限り、共有発明を自由に実施できるとされています(特許法第73条第2項)。

 共有者の一人が、その特許発明を実施しなければ実施することができない利用発明について権利を取得した場合にどう取り扱うかは問題となります。しかしながら、現行法と同様の共有の規定を有する大正10年法の下では、別段の定めをしない限り、同意を得ずに実施できると判断した事例があり(昭和11年(オ)646号「白金合金」事件)、現行法でも同様にするべきと解釈されます。(※1)


参考図書 ※1…吉藤幸朔著「特許法」

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