パテントに関する専門用語
  

 No:  625   

特許出願の要件/先願主義・ダブルパテント/特許権の存続期間

 
体系 実体法
用語

ダブルパテント排除の原則

意味  ダブルパテント排除の原則(重複特許の排除の原則)とは、同一の発明に関して複数の特許が成立することを許さないという原則です。


内容 ①ダブルパテント排除の原則の意義

(a)特許権は、特許を受ける権利を有する者(発明者或いは承継人)が独占権付与の請求の意思表示をすることにより付与されます。

(b)しかしながら、新規性・進歩性などの発明の基本的な価値に関する要件をクリアしても、例えばたまたま複数の特許出願人が実質的に同じ発明に関して特許出願をしたような場合には、このダブルパテント排除の原則が適用され、双方に特許をすることは許されません。

(c)こうした趣旨から、同じ法域(一つの国)において一つの発明には一つの特許のみが成立することが近代の特許制度の原理(一発明一特許の原理)であり、これを我国では、ダブルパテント排除の原則と呼んでいます。

②ダブルパテント排除の原則が適用される理由

(a)特許権の効力(独占排他的効力)からの要請

 特許権の効力は、特許発明を独占排他的に実施できることです。仮に同一発明Aに関して特許出願人甲及び乙にそれぞれ特許を付与すると、甲は特許発明Aを実施することに関して正当な権利を有し、乙は、甲による発明Aの実施を排除することに関する正当な権利を有するということになります(実施者を入れ替えた場合も同じ)。こうした矛盾した状況を回避するために、本原則が必要です。

(b)特許権の存続期間の延長禁止の要請

 特許制度は、新規な発明を開示した特許出願人に対して当該発明を開示することの代償として一定期間に限って特許権を付与し、発明の保護と利用とのバランスを図るものです。

 従って特許権の存続期間が有限であることは、特許制度において非常に大切なことです。

 存続期間の満了により公衆による発明の自由実施が可能となり、発明がより完全に利用できるからです。

 従って、例えば自分の特許出願の出願公開前に実質的に同一発明に係る別の特許出願をして、存続期間の延長を図るというようなことがあると困るのであり、こうした場合に本原則を適用する意義があります。

②ダブルパテント排除の原則の内容

(a)ダブルパテントとは同一の技術的思想の創作に関して二以上の特許が並存している状態をいいます。

(b)“技術的思想の創作”とは、特許に限らず、実用新案も含まれます。技術思想として同質であり、単に後者は“物品の形状・構造・組み合わせ”に係るという限定があるに過ぎないからです。

 意匠は、技術的思想ではないので、対象外です。

(c)ダブルパテントは、同一人が所有する特許を含みます。例えば上述の特許権の存続期間の延長防止の要請等によるものです。

(d)ダブルパテントとは、技術的思想が実質的に同一であることを言います。

・実質的な同一とは特許の一部重複を含みます。例えば一方の特許出願人の発明が要件A+B+Cからなり、他方の特許出願人の発明がA+b+Cであり、Bは“20~50℃”の数値限定、bは“30~40℃”の数値限定というような場合です。

・さらに両発明の相違が上位概念と下位概念との違いであって、機能や作用効果に違いがない場合(設計変更の範囲を超えない場合)には、実質的に同一であると言えます。

③ダブルパテント排除の手段

 さまざまな方法が考えられるところですが、我が国では先願主義(特許法第39条)により調整しています。

 これは異日出願については先の特許出願人を優先する、同一出願の場合には特許出願人同士で協議を行うというものです。


留意点  米国では、発明者が同じである特許出願の間でのダブルパテントの状態をDouble patentingといい、一定の条件のもとで実質的に同一の発明への特許の並存の余地を残しつつ、当該要件を満たさない特許出願を拒絶(Double patent rejection)することにしています。
Double patenting(重複特許)とは


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