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①発明の効果の補充の意義
(a)進歩性審査基準には、“特許出願の請求項に係る発明の有利な効果を参酌しても、当業者が当該発明に容易に想到できたことが十分に論理づけられたときには進歩性は否定される、但し、当該効果が特許出願時の技術水準から予測される範囲を超えた顕著なものであるときには進歩性が否定されないこともある”旨が記載されています。
(b)このため、拒絶理由通知が発せられた後に特許出願時の明細書等に記載されていない発明が顕著な効果として意見書で(或いは特許訴訟の場で)主張されることが実務上見受けられます。
(c)しかしながら、こうした主張は原則として認められません。それほど顕著な効果であれば何故特許出願の当初から記載していなかったのか、記載していないのは発明者自身が認識していなかったからではないか、と審査官や裁判官は考えるからです。
但し、例外的に発明の効果の追認が認められる場合があります。 →発明の効果の追認
(d)そして、特許出願の出願書類の補正は新規事項を追加してはならないので(特許法第17条の2)、特許出願時の出願明細書に記載されていない発明の効果を補充することができません。
②発明の効果の補充の内容
(a)上述の新規事項の追加の禁止の規定があるため、仮に特許出願時の明細書・請求の範囲に記載していなかった発明の効果が認められるのは、特殊な場合に限られます。
例えば特許出願時の図面に記載された発明の構成から発明の効果が読み取れるような場合です。
(b)当然ながら、特許出願時の図面から発明の効果を導き出すといっても、一般論として簡単なことではありません。
それが簡単にできるのであれば、特許出願時に図面さえしっかりしていれば明細書や請求の範囲は特許出願の後の補正により自由に直せるということになりかねないからです。
(c)例えば特許出願時の明細書中に主たる発明の効果が当該発明の効果をもたらす理由とともに記載されており、その理由から派生する従たる発明の効果を補充したり、或いは意見書で主張できる可能性はあります。
→発明の効果をもたらす理由 は稀なことです。ケースです。特許出願人が図面に書いてあると主張しても、審査官の考えても、
(d)なお、発明の効果の補充が困難であるからと言って、特許出願時に真偽が定かでない事柄を発明の効果として記載するべきではありません。信義則の原則から後日それを取り消せなくなる可能性があるからです。
→発明の効果の否認
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