パテントに関する専門用語
  

 No:  658   

リパーゼ判決/新規性進歩性審査基準/特許出願の要件
/発明の要旨

 
体系 実体法
用語

リパーゼ判決

意味  リパーゼ判決は、特許出願の発明の要旨(請求の範囲の記載)の解釈の原則を示すものであり、特別の事情がない限り、当該発明の要旨は請求の範囲の記載通りに解釈しなければならないというものです(昭和62年(行ツ)第3号)。


内容 ①リパーゼ判決の意義

(a)新規性・進歩性審査基準には、発明の要旨、すなわち請求の範囲の解釈の原則としてこのリパーゼ判決が引用されています。

(b)リパーゼ判決の以前でも、発明の要旨は特許出願の請求の範囲に基づいて定めることが通常でしたが、個々の特許出願の事情に応じて明細書の実施例を参酌して請求の範囲を解釈する場合もない訳ではなく、原則と例外との関係が明確ではありませんでした。

(c)本判決は、最高裁判所がその関係に関して判示した点に意義があります。

②リパーゼ判決の内容

(a)リパーゼ判決の骨子は次の通りです。

「この要旨認定は、特段の事情のない限り、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである。特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか、あるいは、一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎない。」

(b)「特別の事情」として、技術的意義が明確に理解できない場合、一見して記載の誤記であることが明細書から明らかである場合が挙げられています。
特別の事情とは(リパーゼ判決)

③リパーゼ事件の経緯

(a)本事件では、酵素の一種であるリパーゼの発明に関する特許出願が進歩性欠如により拒絶され、拒絶査定不服審判でも拒絶査定が支持されたため、審決取消訴訟が提起されました。



(b)高等裁判所は、明細書の実施例が「Raリパーゼ」を対象とするものであったところから、請求の範囲中の「リパーゼ」を「Raリパーゼ」と限定解釈して拒絶審決を取り消す判決を出したため、この判決の是非が争われました。


留意点

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