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特別の事情とは(リパーゼ判決)/新規性進歩性審査基準/特許出願の要件 |
体系 |
実体法 |
用語 |
特別の事情とは(リパーゼ判決) |
意味 |
リパーゼ判決における“特別の事情”とは、特許出願の発明の要旨の認定は特許請求の記載に基づいて定めるべきという原則を離れて、特許出願の明細書の実施例等の記載を参酌するべき別段の事情をいいます。
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内容 |
@特別の事情の意義
(a)リパーゼ判決は、「この要旨認定は、特段の事情のない限り、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである。」と判示しています。
特許法第70条第1項の規定の趣旨や特許法第36条第5項の「特許請求の範囲には…特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要な全てを記載しなければならない。」から、特許出願の係属中においても請求の範囲が保護範囲を求める機能の中心を担うと考えられるからです。
(b)「特段の事情のない限り…特許請求の範囲の記載に基づいてされるべき」とは、例えば特許出願の請求の範囲に記載された要件Aに関して明細書に記載されている事項が要件Aの下位概念aのみであっても、それだけでは、要件Aをaに限定する理由としては足りないことを意味します。
A特別の事情の内容
(a)リパーゼ判決は、次の場合などが特別の事情に該当する旨を述べています。
(b)特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができない場合。
(イ)例えば“○○が隅角部に位置する”という文言に関して、“固定された場所に位置する”態様と“一定の範囲で動く”態様とが想定され、意味を一義的に定めることができない場合が該当します。
→{特別の事情のケーススタディ1(リパーゼ判決)}
(ロ)或いは請求の範囲中において「所定の角度」という用語が使用されており、請求の範囲の記載全体を見ても、“所定の”の意味が分からないような場合が該当します。
(ハ)すなわち、審査官は、新規性や進歩性の判断において特許出願の明細書の実施例を参酌して角度の意味を解釈することができます(新規性・進歩性審査基準)。
(ニ)もっとも、こうした場合には審査官は進歩性等の判断以前に請求の範囲が不明確である旨の拒絶理由通知を発するのが通常ですので、殊更に請求の範囲を不明確にする用語を使用するべきではありません。
→リパーゼ判決の意義とは
(c)一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかである場合。
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留意点 |
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