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673 権利の濫用の効果/特許出願/進歩性/訂正審判 |
体系 |
権利内容 |
用語 |
権利の濫用の効果 |
意味 |
権利の濫用の効果とは、権利の本来の目的から外れ、社会的に許されない態様で当該権利を行使することが認められないことをいいます。
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内容 |
@権利の濫用の効果の意義
(a)権利の濫用の効果は、原則的に、その権利行使により元来得られるべき法律効果が生じないことに留まります。
換言すれば、原則的に、権利の濫用により権利が喪失したり、権利がはく奪されるというものではありません。
(b)しかしながら、特別法の規定により、例外的に権利が消滅することがあります(例えば親権濫用に対する民法834条)。
A権利の濫用の効果の内容
(a)例えば標準必須特許に関して特許出願人がFRAND宣言していたのに、特許権者になってからFRAND条件を超えた高額のライセンス料を他人に請求するのは権利の濫用であるとした事例があります(→権利の濫用とは)。
しかしながら、裁判所が特許権の濫用を認定しても、差止請求権・損害賠償請求権等の不存在が確認されるに留まり、特許権がはく奪される訳ではありません。
特許法は、特許に無効理由が存在する場合に争う方法として、特許無効審判制度を設けてられていますが(特許法123条1項)、そもそも権利が濫用されたことは、無効理由にはなりませんし、別に権利の濫用により特許権を取り消すなどの規定もありません。
(b)もっとも、特許権に関して、私的独占又は不当な取引制限としたことを理由として特許権を取り消す旨が独占禁止法第100条により定められていますが、それは一般法の権利の濫用理論とは別の問題です。
→特許権の取消とは(独占禁止法)
(c)特許権の濫用によって権利がはく奪されることがないといっても、個々の権利行使の状況次第では、特許権自体が死に体になってしまうことがあります。
(イ)例えば或る請求項の発明が新規性・進歩性を欠落しているために無効であることが明白であるために特許権の行使が権利の濫用に当たると認定された場合には、同じ請求項に関して同様の訴訟を起こしても同じ結果になることが予想されます。
(ロ)訂正審判を請求して新規性・進歩性を取得すれば別ですが、権利を持っていることに意味がなくなってしまうのです。
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