体系 |
権利内容 |
用語 |
権利の濫用 |
意味 |
権利の濫用とは、ある権利を与えられた者がその権利の本来の目的から外れ、社会的に許されない態様で当該権利を行使することをいいます。
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内容 |
@権利の濫用の意義
(a)外形的には権利の行使であるが、その行使を認めてしまうと、社会的に影響が大きく不適当であるという場合があります。
(b)例えば特許権者は業として特許発明を実施する権利を専有すると、定めていますが、産業の発達を著しく阻害する態様で権利行使をすることは、公益に反して、妥当ではないため、権利の濫用として禁止される可能性があります。
(c)国によっては、自ら特許発明を実施せずに(或いは実施許諾もせずに)専ら他人の実施を差し止めることを公益に反するとして規制する国もありますが(→パリ条約5条A)、日本ではそうした扱いはしていません。
A権利の濫用の禁止に関する規定
(a)憲法12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民はこれを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と規定しています。
(b)民法1条3項は、「権利の濫用は、これを許さない。」と規定する。
権利の濫用が成立するかどうかは、客観的な事情を判断すれば足り、権利の行使者と相手方との利益のバランスを考えて判断するべきというのが通説です。
→権利の濫用の成立要件
B権利の濫用の内容
権利の濫用は、裁判の当事者がよく主張しますが、裁判所がそれを認めることはあまりありません。そうした事例を幾つか挙げます。
(a)平成10年(オ)第364号(いわゆるキルビー判決)
(イ)特許出願A(親出願)を分割して特許出願B(子出願)を行い、さらに特許出願Bを分割して特許出願C(孫出願)を行った事例です。特許出願Cに付与されたパテントの仮処分の申請をしたところ、相手方が債務不存在確認訴訟を提起しました。
(B)裁判所は特許出願B及びCは実質的に同一の発明を対象としており、分割出願の要件を満たしていないから出願日の遡及効がえられず(→分割出願の遡及効とは)、無効理由があることが明らかであるから、こうした特許に基づく権利の行使は権利の濫用であって許されないと判断しました。
→キルビー判決とは
(b)平成25年(ネ)第10043号
(イ)標準必須特許に関して、特許出願人がFRAND宣言をしていたにも関わらず、そのライセンスを受けたい旨の申出をした者に、FRAND条件のライセンス料を超えて損害賠償を請求すると、権利の濫用となる旨が判示されました。
C権利の濫用の取り扱い
権利の濫用が行われても一般に権利の喪失にはつながりません。 →権利の濫用の効果
D外国での特許権の濫用に関しては下記を参照して下さい。 →特許濫用(Patent
misuse)とは
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