内容 |
①特許出願等の手続上の手続補正書の意味合い
手続の補正は、その補正後の補正内容で手続をしたものとみなすという特別の恩恵を特許出願人又は各種の申請・請求の手続者に与えるものです。
そうした恩恵を無制限に認めると、時間の節約のために杜撰な書類をして後で補正をする者が有利ということになり、行政手続の効率性を損ないます。
そうした観点から、手続補正書の内容には一定の制限が課されていることに、特許出願人或いはその他の手続者は留意する必要があります。
②特許出願の願書や各種請求書の記載事項には補正できない事柄があります。
(a)新規性喪失の例外の主張、いわゆる分割出願・変更出願である旨や国内優先権の主張等の特記事項など、特許出願と同時に意思表示するべきだったものを、特許出願の後に手続補正書で補正しようとしても、補正できませんので、注意するべきです。
(イ)これらの事柄は、特許出願の要件(進歩性等)の時期的基準に関わることであり、後日恣意的に認めることは、他の誰かの利益を損なう可能性があるからです。
(ロ)特許出願をした直後に誤りに気付いて、同日中に補正しようとしても、そうした補正は認められません。
(ハ)同日中にそうした誤りに気付いたときには、再度特許出願をやり直すべきです。最初の特許出願を取り下げても、2番目の特許出願で同じ出願日を確保できれば実害は少ないからです。
(b)特許出願の請求の範囲・明細書・図面には新規事項を追加する補正をすることができません。
(イ)そもそも特許出願の開示内容に全く記載がないことの追加は、補正の趣旨(誤りを正すこと)から見て許されることでないですが、特許出願の特定の記載事項が本来こういう意味であったと補正することも、新規事項に相当すれば、許されません。
特許出願日の遡及効により、第三者の利益を害するおそれがあるからです。
③補正は、補正の単位を守って補正するべきです。
特許出願人は、例えば明細書の段落中の一行であるとか、発明者の欄の氏名だけというように恣意的に範囲を定めて補正することができません。
方式で定められた補正の単位を守る必要があります。 →手続補正書の補正の単位とは(特許出願等の手続の)
特に、複数の発明者がいる場合には、発明者全員が補正の単位です。間違って一人の発明者の記載を補正すると、他の発明者を特許出願の願書から削除する意味になりますので、十分に注意が必要です。
③手続補正書は、分割出願や拒絶査定不服審判の請求書と同時に提出する場合でも、これらの書類からは独立した書類であることに留意するべきです。
→補正書の独立性とは
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