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715
特許出願の先行技術情報開示要件/明細書/進歩性/特許調査 |
体系 |
特許申請及びこれに付随する手続 |
用語 |
特許出願の先行技術文献情報開示要件 |
意味 |
特許出願の先行技術文献情報開示要件とは、特許出願人が特許を受けようとする発明に関連する文献公知発明のうちで特許出願の時に知っているものがあるときには、その文献公知情報の所在を示す情報を発明の詳細な説明に記載しなければならないという要件をいいます(特許法第36条第4項第2号)。
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内容 |
@特許出願の先行技術文献情報開示要件の意義
(a)特許出願人に文献技術開示を求めるのは、特許出願人の有する先行技術に関する情報を活用するためです。
(b)特許出願の新規性や進歩性を審査する場合に特許出願人自身が特許を受けようとする発明に最も近い先行技術を知っていることはよくあることです。例えば或る先行技術の欠点を克服するために発明をした場合です。通常は、特に要求されなくても、よい明細書を作成するためにそうした先行技術は記載するべきなのですが、文献の内容だけ記載していてその情報のソースが不明という場合が少なくなかったため、平成14年の一部改正により、従来努力目標であった先行技術の開示を義務化しました。
(c)特許出願人が技術情報を積極的に開示することにより、発明の客観的な理解が可能となり、本件特許出願の発明の把握及び特許調査が容易になります。
→特許調査とは
(d)この義務は、信義誠実の原則に基づいていると言えます。外国でも、例えば米国特許出願人には同種の義務があります。
→特許出願人の誠実義務(Duty of Candor and Good faith)とは(米国)
A特許出願の先行技術文献情報開示要件の内容
(a)「文献公知情報」とは、特許法第29条第1項第3号にいう文献公知発明の情報をいいます。公知や公用は対象外です。特許庁が審査し易いものに限る趣旨です。
(b)具体的には、特許出願の明細書の「先行技術文献」の欄に文献の所在(例えば特開XXXX−XXXXのように記載します。
(c)「文献の所在を示す情報」が必要なので、先行技術の内容だけを記載しても義務を果たしたことになりません。
(d)こうした所在情報を記載していないときには、審査官から特許出願人に対して情報の開示を求める通知がなされ、それでも特許出願人がこれに応じないときには、特許出願を拒絶する理由となります。
(d)なお、最初から拒絶理由としないのは、開示義務違反を常に審査対象とすると審査の遅延を生ずるおそれがあるからです。特許出願人の情報開示を待つまでもなく、新規性・進歩性を否定する別の文献があれば、そうした手続は要らないからです。
(e)特許出願人による文献情報開示要件違反は、特許出願を拒絶する理由にはなりますが、無効理由にはなりません。
文献情報開示要件違反を根拠とする無効審判の請求が多発すると不都合だからです。
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