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 パテントに関する専門用語
  

 No:  735   

特許明細書の見方(技術情報)/利用発明/進歩性/特許出願

 
体系 特許申請及びこれに付随する手続
用語

特許明細書の見方(技術情報として)

意義  特許明細書とは、一般に特許権の権利書として権利情報及び技術情報を含んでいますが、ここでは主に技術情報としての見方を解説します。


内容 @特許明細書の記載事項

(a)特許明細書は、〔発明の名称〕・〔技術分野〕・〔背景技術〕・〔発明の概要〕〔図形の簡単な説明〕・〔発明を実施するための最良の形態〕・〔符号の説明〕という項目を含みます。

(b)〔発明の概要〕の欄は、〔発明が解決しようとする課題〕・〔課題を解決するための手段〕・〔発明の効果〕という項目を含みます。

(c)例えば自ら発明した技術に関して特許出願しようとして、特許調査をしたところ、関連ある先行技術として、他人の特許明細書が見つかったとします。

(d)自分が特許出願しようとする発明が先行技術の設計変更にすぎないものなのか、それとも特許出願の拒絶を免れる可能性があるのか、特許になったとして他人の特許発明の利用発明になるのか、を見極めるのは重要なことです。

(e)そのためには、他人の特許明細書(或いは特許出願公開公報)に開示された発明を正確に理解する必要があり、そうしたことの見方をここでは解説します。

A〔技術分野〕に関して

(a)発明の名称を一見したところ、技術分野が全然異なるように思えても技術的思想の原理の共通性から、2つの先行技術の技術分野が一致すると認定され、両者の組み合わせにより進歩性を否定される場合があります。

(b)例えば先行技術が「錠剤製造機」及び「煉瓦成形機」であり、発明の課題は粉末を圧縮して成形品を得るものである点で共通し、課題を達成する手段として、金型へ入れる成形用粉末材料の容積を調整することによって成形品の重量を調整する技術手段をもつことも共通するから、技術分野が一致するという具合です。
昭和57(行ケ)86号「粉末圧縮成形機」事件

B〔発明が解決しようとする課題〕に関して

(a)前記Aとは反対に発明の名称が類似していても、課題の相違から、設計の変更が自明ではないとされた事例もあります。本件特許出願の発明は「紙葉類識別装置の光学検出部」であり、紙幣の異常(紙幣の一部を切り取って別の紙幣に張り付けるなど)を検知することを課題としています。主引用例は、「紙葉類の積層状態検知装置」です。

(b)構成の相違

 本件特許出願の構成:紙幣をX方向に搬送しながら、X方向とは異なる2つの検査スポットにおいて、検査用の光線を、紙幣の表から裏へ透過させるとともにこの透過光線を紙幣の裏から表へ通過させる

 主引用例の構成;紙幣の2か所にそれぞれ別の光線を透過させる。

(c)この構成上の相違点に関しては副引用例に開示されていたのですが、そもそも主引用例は紙幣の積層状態を検査するものであり、紙幣への悪戯を見つけるという意図はないのであるから、副引用例を結び付ける動機付けはないだろう、と判断されました。
平成17年(行ケ)10490号「紙葉類識別装置の光学検出部」事件

C〔発明の最良の実施形態〕に関して

 他人が先に特許出願して権利化された特許発明A+B+Cの構成要件の一つ(A)の概念のうちの下位概念aを選択して、要件a+B+Cの発明として特許出願をしたものを選択発明といいます。選択発明は利用発明として特許になる可能性があります。

 しかしながら、その下位概念aが他人の特許明細書のどこか(例えば実施形態の欄)に開示されたものであるときには、特許になりません。



留意点

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