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①再訴の意義
(a)一般に民事訴訟は、私人間の紛争を完全に解決することを目的としますから、一旦終了した訴訟と同じ内容の訴えが提起されるというようなことは、イレギュラーなことです。
(b)先の訴えの判決が確定したときには、既判力が働きます。すなわち、裁判が確定した場合、同一事項がその後訴訟上問題になっても、当事者はこれに反する主張ができず、裁判所のこれと抵触する裁判ができないというものです。→既判力とは
また特許法上、既判力に類似する概念としていわゆる一事不再理の原則(特許法第167条)があります。すなわち、特許無効審判や延長登録無効審判の審決が確定したときは、当事者及び参加人は、同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求できないのです。
同一の事実及び同一の証拠に基づいて紛争の蒸し返しができるというのは不合理だと考えられたからです。
(c)他方、訴訟は、訴えの取り下げにより、終了する場合もあります。こうした場合に働くのが再訴禁止効です(民事訴訟法第262条第1項)。
②再訴の内容
(a)民事訴訟法第262条には次のように規定されています。
(1)訴訟は、訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなす。
(2)本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない。 →終局判決とは
(b)仮想的な事例ですが、技術の開発に甲・乙が関わって、乙が単独で特許出願をしたために、甲との争いを生じ、乙は特許を受ける権利が乙に帰することの確認の訴えを提起したとします。
その後、乙は、訴えの途中で甲との話し合いによる解決を期待して、一旦訴えを取り下げたのですが、結局、和解には至らなかったとします(→私法上の和解)。訴えの取り下げが裁判所の判断が下される前に行われたのであれば、その特許出願を巡る紛争は未だ解決していないのですから、再度の訴えを認めたとしても、“紛争解決を目的とする裁判の意義”を損なうことはありません。しかしながら、裁判所の終局判決が出され、控訴中に取り下げたときには、控訴しなかった場合に既判力が生ずることとの均衡上、再訴を認めることは適切ではありません。こうした場合に再訴禁止効が働きます。
(c)なお、被告が応訴した後の訴えの取り下げには相手方の同意が必要ですが、この場合に被告が“再訴されないこと”を期待して、取り下げに同意するのであれば、再訴しない旨の約束を書面にして残しておくべきです。これをしないで後日再訴されたことを信義則違反と主張したが、裁判所に退くけられた事例(特許権侵害差止請求事件)があります(平成25年(ワ)第30799号)。
裁判所の見解は次の通りです。
「被告が前訴の取下げに至る経緯に基づいて再訴されない旨の期待を抱いたことがあったとしても,被告が原告による前訴の取下げに同意するに当たり,原告が被告に対し再訴をしない旨約したなどの事実関係があるわけではないから,上記期待は,被告が一方的に抱いたものにすぎず,未だ法律上保護されるほどのものとは認められない。」
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