[判決言い渡し日] |
平成29年 1月20日 |
[発明の名称] |
オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤 |
[主要論点] |
特許権の存続期間の延長登録の理由となった政令で定める物の解釈 |
[判例の要点] |
@特許法第68条の2の「処分の対象となった物」が医薬品である場合、延長登録後の特許権の効力は、薬事法の審査事項である「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」によって特定された「物」のみならず、これと医薬品として実質同一なものに及ぶと解されます。 A「処分の対象となった物」の実質的同一の態様として次のものがあります。 (a)医薬品の有効成分のみを特徴とする特許発明に関する延長登録された特許発明において、有効成分ではない「成分」に関して、対象製品が、政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき、一部において異なる成分を付加、転換等しているような場合、 (b)公知の有効成分に係る医薬品の安定性ないし剤型等に関する特許発明において、対象製品が政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき、一部において異なる成分を付加、転換等しているような場合で、特許発明の内容に照らして、両者の間で、その技術的特徴及び作用効果の同一性があると認められるとき、 (c)政令処分で特定された「分量」ないし「用法、用量」に関し、数量的に意味のない程度の差異しかない場合 (d)政令処分で特定された「分量」は異なるけれども、「用法、用量」も併せてみれば、同一であると認められる場合 B特許出願の経緯による禁反言(→包袋禁反言の原則とは)は「処分の対象となった物」の実質的同一の判断に適用されます。 |
[本件へのあてはめ] |
@延長登録された本件特許権は後発的医薬品であるために前記実質的同一性の態様のうちの(b)に該当するか否かが問題となるところ、その請求の範囲の構成要件“濃度が1ないし5mg/mlでpHが4.5ないし6のオキサリプラティヌムの水溶液からなり”に関し、 ・明細書に“この発明の目的は…添加剤を含まないオキサリプラティヌム水溶液を用いることにより達成できる”旨の記載及び“この製剤は他の成分を含まず、原則として、約2%を超える不純物を含んではならない。”旨の記載があること ・特許出願の審査で提出された意見書に“水溶液が、酸性またはアルカリ性薬剤、緩衝剤もしくはその他の添加剤を含まないという本件発明の構成においてのみ、「安定な水溶液」を得られる”旨が明記されており、この意見を受け入れて特許査定に至ったこと に鑑みれば、「オキサリプラチンと注射用水のほか、有効成分以外の成分として、オキサリプラチンと等量の濃グリセリンを含有する」係争物は、効果の同一性の要件を満たしておらず、処分を受けた物と実質的に同一のものと認められません。 |
[先の関連判決] |
平成26年(行ヒ)第356号(ベバシズマブ事件・最高裁) |
[後の関連判決] |
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